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第四世代

丈編 リアルな人形

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『自分が巣から落ちてしまったからそうならないように気を付けてるのかも?』

人間はえてしてそんな解釈をしてしまったりするだろうが、しかし今回ばかりは逆にそれが仇となったようだ。

アリスやドライツェンのように上手く木に登ることができないホビットMk-Ⅱが、ハシゴまで作って用意したってのに、ヒナを巣に戻す機会がいつになっても訪れない。

その間も放っておくことはできず、ホビットMk-Ⅱらが甲斐甲斐しくヒナの世話をする。

かつてあんずとますらおがヒナを保護した時のデータがそのまま共有されていることによって、ノウハウも確実に引き継がれている。

加えて、この密林に生息する動植物の研究も地道に続けられていたことから、その鳥の生態についてのデータもさらに蓄積されていた。

これにより、ホビットMk-Ⅱがそのまま直接世話をするのではなく、親鳥をモデルにして<コーネリアス号の工作室>で新たに製造された<人形>を介して世話をすることに。

その人形は、さすがに単体で自律行動ができるほどのものではないものの、<指示棒>を思わせる細い棒の先にリアルな造形の<親鳥の人形>が付いていて、しかも、羽ばたいたり、くちばしを使ってヒナに餌をやる程度の動きは再現できる精密なものだった。

まあこれも地球人社会じゃ<玩具おもちゃ>程度のものだけどな。十分な技術と設備さえあれば、それこそ鳥の姿と行動を完全再現したロボットだって作ることはできるし、そういうのが<テーマパーク>や<博物館の展示物>や<保護動物の世話>にも利用されてるんだ。

ちなみに、地球人社会では<動物園>および<水族館>は基本的に廃止されている。あくまで<保護動物>を間近で見られる施設なんかも存在するものの、当然それは動物が保護された時だけしか見られないため、日常的に訪れることができる常設の<動物園や水族館のような博物館>で展示されているのはほとんどがロボットだ。

とはいえ、メイトギアと同じくパッと見は本物と区別がつかないほどだし、それこそ<臭い>だって再現されている。しかも、

『リアルな生態を展示するため』

に<糞>までするぞ。もちろん排出されるのはリアルに糞を再現しただけのものだけどな。

これにより、

<ただの見世物>

としてはもとより、

<生き物についての簡便な学習施設>

としての機能も果たすことができるというわけだ。

ちなみに、それら<動物園や水族館のような博物館>も、さすがに最初期の頃のものは、臭いもなく糞をすることもなかったことで、

『リアルな生き物を間近で見る』

感じじゃなかったそうだが。

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