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第四世代

丈編 幽霊退治

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『<朋群ほうむ人を人間として認識できるAI>が存在してる状態でそう命令した方がより確実』

ああそうだ。AIへの命令は<具体性>がないと、こちらが意図してる通りに受け取ってくれるとは限らないし、そもそも<命令>として認識されない可能性だってあるんだ。

たとえば、<幽霊スポット>に行って、

『幽霊が怖いから退治してくれ』

などと命じたところでAIの側は、

『<幽霊>なる警戒すべき対象は確認できません。存在しない脅威に対処することはできません』

と応えるだけなのが分かってる。

なにしろ、幽霊がまったく平気で怖くもなんともないと感じる人間も現にいるからなあ。幽霊を怖いと感じて<脅威>と捉えているのはあくまで当人の問題であって、実際にそこに存在する脅威じゃないわけで。

これがいわゆる<不快害虫>などの場合だと、これまた平気な奴は平気だろうが、少なくとも現にそこに存在するから対処はしてくれる。たいていは殺したりせず追い払うだけであってもな。

AIにとって<不快害虫>は人間に対する危険度も低く、同時にそこで生きている<種>である以上は、人間よりも保護対象としての重要性は格段に下がっても、命を奪ってまで排除する必要性がまったくないんだ。また現れればまた追い払えばいいだけだし。人間はその手間を惜しんで、

『殺してしまうことで二度とこないようにする』

が、AIとAIに制御されるロボットはその手間を惜しむことさえない。何度でも何度でも同じ対処を繰り返すことができる。

しかも今の地球人社会であれば、

<不快害虫を寄せ付けないようにするあれこれ>

は豊富に取り揃えられている。<気休め>程度のものから<実際に効果がある忌避剤>までいろいろだ。そういう形で、

<他の種との共存>

が成立している。

しているが、やっぱり<幽霊>なんてものと戦ったりはできないよなあ。

とはいえ、<人間の心理>というものについての研究も進んでるから、

<幽霊を怖いと感じる本人>

にとっては精神衛生上好ましくない事態であるのもまた事実であるとは認識できるから、実は、

<おまじない>

程度のこともできたりはするんだよな。これは決して<オカルト>じゃない。

<人間の精神を安定させるための手法の一つ>

として具体的に確立されてるものだ。

だから<それっぽい振る舞い>をして、

「もう大丈夫です」

みたいなことを、俺が地球人社会で暮らしていた頃に流通していたロボットは言ってくれたりはする。

ただ、セシリアやメイフェアやイレーネやアリアンや鈴夏すずかは、『<幽霊>なる警戒すべき対象は確認できません。存在しない脅威に対処することはできません』と応えるらしいけどな。

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