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第四世代

丈編 一貫性がなくいい加減

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新暦〇〇三八年九月十日



そんなアカトキツユ村も基本的に平穏が維持されていて、シミュレーションとしても上々だという印象がある。

『何か厄介事が起こってくれてそれに対処することでさらにデータ収集を』

と思うかもしれないが、

『そういう厄介事が起こらないように事前に対処できている』

こと自体も立派なデータになるんだよ。ルナがまだアカトキツユ村に来たばかりの頃にはぐれそうになったりもしたが、それをあんずがフォローしてくれたってこともあったりした。

『ルナがはぐれて行方が分からなくなってそれを捜索する』

という事態に至ればそれ自体がデータにもなるとしても、重要なのは、

『そうならないように事前に対処する』

ことであって、

『ことが起こってしまってからどうするか?』

については、事前に十分に備えてもなお起こってしまった時にデータ収集を行えばいいだけで、俺達とは関係のないところで起こっている事例について検証すればいいだけで、なにも意図してそういう事態を引き起こす必要はまったくないんだ。

と、今は思ってる。思いながらも、その時その時で対処を変えたりするからなあ。そういうところも、

『一貫性がなくいい加減』

だと見られることもあるだろうな。だが、他人のそういう部分をざまに言う奴ほど当人の言動には一貫性がなかったりするからな。人間である以上、どうしても矛盾は存在するし、精神状態やその時の状況によって判断や言動がぶれるなんてことは当たり前にある。そんな現実とも向き合えない奴の戯言なんか気にしてても仕方ないさ。

仕方ないが、だからといって自分の矛盾を肯定するのも違うだろうなとは思う。だからついついやらかしてしまった時には申し訳ないとも思うよ。

そして、だからこそ俺は自分を<完璧>だなんて思わないし思えないんだ。思いたくもない。こんな俺が偉そうにしてたらそれこそ反発されるとしか思わない。

地球人社会には、場当たり的で矛盾ばかりの振る舞いをしておいてそれを責められたらキレる奴も珍しくなかったが、そんな奴でも信奉者がいたりして、すごく不可解な気分にさせられたりもしたよな。

だが、<崇拝>ってのはそういうもんだろう。何の根拠もないオカルトに頼る人間は今なおいなくならないし。だが、当人にとっては必要なことなんだろうさ。

だから俺は、個人的には納得できないことでも面と向かって口出しするつもりもないんだ。それをしたところで得るものもない。

あるとしても精々が<自己満足>だろう。

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