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第四世代

丈編 それなりに価値もある

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『嘘を吐くという行為は、心を持つからこそできることである』

というのも分かってきているそうだ。

<虚偽の事実を告げるという行為>

自体は、別に心を持たなくても、

『そうするように設定されれば』

できるようにはなるが、それはつまり、

『そうするように設定されなければそもそもしない』

という意味でもあって、

『嘘を吐く必要がそもそもない』

ってことなんだよな。心を持つからこそ、

『嘘を吐くことで得られる何かを欲してしまう』

し、

『嘘を吐くことで得られる何かを欲してしまう自分を抑えられない』

わけで。まさに<矛盾>だな。

AIには『嘘を吐くことで得られる何かを欲してしまう自分を抑えられない』なんてことがない。その必要がないんだ。<AIによって構成されたネットワーク>全体がAIにとっては<自己>であって、個々の機器に搭載されているAIはその一部でしかない。<人間にとっての細胞の一つ>のようなものであって、それが一つ失われたところで痛くも痒くもないし自らの存在そのものを揺るがすこともないから、人間のように、

『自分を守るために嘘を吐く』

こともする必要がないんだ。

必要がないから、

<嘘を吐くという行為の意味>

も理解できない。嘘を吐くことによって人間が何を守ろうとしてるのかは理解してるものの、<存在そのものの形態>がまったく違うから、

<自分が嘘を吐かなきゃいけない理由>

がないんだよ。ないから理解できないと。

そういうことだ。

だからこそ人間という生き物を客観的に見てくれる。評価してくれる。対処してくれる。

<経済的損失>という、

<取り返しのつく事態>

については固執する必要もない。で、

『戦争をする必要性については理解できなくても、人間が戦争をせずにいられないのは理解しているから、<人的被害が出ない、あくまで経済的な損失だけで済む儀礼的な戦闘行為>については容認して、ガス抜きに協力する』

なんてこともできてしまうと。

<戦争や紛争によって生じる経済的な損失>

に比べれば、

<私企業の中で個人が生じさせる経済的損失>

なんてのは可愛いもんだしな。しかもそれが結果として<経験>や<先例>として活かされるなら、それなりに価値もあるというもんだ。

人間は心を持つからこそ目先のあれこれに囚われてしまったりするものの、心を持たずいかなることも客観視してそこから生じるあらゆる事態をシミュレーションできるなら、そういう思考もできるってことだろうな。

それが人間にとっては、

『無機質だ』

『あたたかみがない』

と感じられたりするとしても。

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