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第四世代

丈編 腐るほど実例がある

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こうしてマンティアンを避けて、その日の目的だった<お気に入りの果実>を諦めたあらたとレトとルナは、別の<お気に入りの果実>が生る木があるところにやってきた。

それを、ドローンとホビットMk-Ⅱが見守る。

急な予定変更にも、ロボットは不平不満を口にしたりしない。これが人間(地球人)の場合だと、<自分の役目>だと分かっていてもついつい不満を口にしたり愚痴をこぼしてしまったりするんだろうな。

まあそれ自体が<ストレス発散の手段の一つ>であることも事実だから、

『不満や愚痴を口にするな!』

と言ってしまうのも違うんだろうし、俺としてもそんなことは推奨しない。あくまでも、

『AIとAIによって制御されているロボットは、人間とは異なる存在である』

ってだけの話だ。そして<人間とは異なる存在>であること自体に意味があるんだと実感してる。これが完全に人間を模倣した存在だったら、

『いや、それなら人間が操縦したり、人間自身がサイボーグ化すればよくね?』

みたいな話にもなりかねない気がするんだよ。

『人間は誰一人としてまったく同じ者は存在しない。だからこそ一人一人に価値がある』

というのと同じとも言えるか。

『違うからこそ意味がある。価値がある』

ってことだな。

それは必ずしも『自分にとって都合がいい』ことを担保するわけじゃないが、何度も言うようにこの世ってのは自分にばかり都合のいいようにはできてないという大前提がある以上、

『自分にばかり都合がいいのを求めれば、結局は自分自身を追い詰める』

のも事実だろうさ。

だってそうだろう? 

『自分にばかり都合のいい世界を実現しようとした奴がどんな結末を迎えたか?』

なんて、地球人の歴史をちょっと振り返るだけでも腐るほど実例があるじゃないか。そういう現実から目を背けて自分にばかり都合のいい世界を実現しようとする奴は後を絶たないのもまた現実ではある。

<多様性>の話なんかまさしくそれだよな。一部の人間にばかり都合のいい社会を求めるから衝突する。軋轢が生まれる。その<一部の人間>ってのが少数派だろうが多数派だろうが関係ない。『自分にばかり都合のいい世界を望んでる』以上は、やってることはどっちも同じだ。

『その考えに納得できない者は必ずいて、反発せずにいられない』

という点じゃ何も違わないんだよ。<多数決>だけで物事を決めてしまうこともできないのは、これまた地球人の歴史を振り返るだけでも明らかだしな。

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