未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます（Ver.02）

第四世代

丈編 猪竜の幼体

野生の生き物にとって、子供のうちに親とはぐれたり死に別れたりするのは、そのまま死に直結する状況でもある。だが同時に、それこそ人間の手の平に乗るくらい小さな生き物だって強かに生きてるよな。人間の赤ん坊の力でさえ容易く握り潰してしまえるような脆弱で非力な生き物でも、普通に生きていたりもする。

ましてや猪竜シシは、生まれた時点で、＜チップ竜チップ＞と俺達が呼んでる小動物よりもずっと大きい。そして当然のように、生まれてすぐに立ち上がり、自分の足で歩き出す。しかも一ヶ月もしないうちに乳離れして、木の実や草の芽だけでなく、昆虫なども食べるようになる。

こうなるともう、＜天敵＞にさえ遭遇しなければ、親から教わっていなかった毒を含む餌を食さなければ、親に守られなくても生きていけるというわけだ。

しかも今回の個体は、体重だけでもすでに三十キロはありそうな大きさだった。猪竜シシとしてはまだ子供でも、たぶん、生身で素手の地球人であれば襲われると命さえ危うい可能性だって十分にある＜猛獣＞なんだよ。

地球人の子供とはわけが違う。

まあ、地球人の子供であっても、＜ストリートチルドレン＞と呼ばれる、親を亡くし大人の庇護もロクに受けられない状態で生き延びてみせているのもいたりするから、ましてや野生の生き物なら、生き延びられても別に不思議はないだろうさ。

だがそれも、やはり恐ろしい天敵に遭遇しなければの話。そして今、まさしく天敵であるマンティアンと遭遇してしまったわけだ。

この時点でもう運命は決まったも同然だが、だからと言って素直に諦めるはずもないのは、これまでにも何度も何度も語ってきたとおり。

成体おとなも幼体こどももない。生きている以上は生き延びようと足掻く。

「ギピィッ！？」

突然、自分の前に現れて鎌で捉えてきたマンティアンに驚きながらも、猪竜シシの幼体こどもも一瞬で臨戦態勢を整えた。がっちりと体を掴まれても、そんなことでは諦めない。観念しない。

地球人なら筋骨隆々で体重百キロの格闘技経験者でさえおそらく押さえ付けておくことさえままならない力で暴れ、逃れようとした。

とは言え、淕りくだって決して引き下がらない。生きるために食うために捕らえた＜餌＞だ。簡単に逃れられていては今度は彼の方が命を繋げなくなる。

鎌で体を捉えた上で、膝を猪竜シシの脇腹に何度も叩き込む。生半可な打撃では蚊に刺されたほどにしか感じないであろう猪竜シシの筋肉と脂肪の鎧をもってでさえダメージを防ぎきれないほどの威力の膝だ。

「ゲヒッ！　ゲヒィッ！！」

淕りくの膝が叩き込まれるごとに、猪竜シシは悲鳴を上げたんだ。