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第四世代
丈編 ロクな目に遭わない
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こうして鋭も難を逃れたわけだが、その一方で、あの若いマンティアンにしてみれば、
『ロクな目に遭わない』
って話だろうな。
それについて俺なんかは、
『さっさと別の地域に移ればいいのに』
と思ってしまうんだが、それは所詮、<神の視点>を持つからこその発想だろう。彼にしてみれば、
<丈の縄張り>
<淕の縄張り>
<玲やメイの活動範囲>
<鋭の活動範囲>
と、場所を移してるつもりなんだろうし。ただそれがことごとく<ハズレ>なだけであって。
こういう時、<言葉>で警告を出せないのは不便だよ。いや、メイトギアがいればマンティアンの言語を解析して話すことも不可能じゃないが、野生のマンティアンの場合、
『言葉で相手を追い払う』
という習慣がないからな。
『これからここには近付くな』
とか言ったところで何のことかすら理解できないだろうし。
そもそもそういう概念がないから、それを示す言葉もないわけで。
『くるな』
『近付くな』
的なニュアンスを持つ<発声>はあっても、<単語>としては存在してないようだ。
だから結局、接近する度に追い払うしかないんだよ。
野生動物が人間の住む場所に近付くような事例についてもそうだろう? とにかく近付く度に追い払うしか手はない。その中でたまたま遠くに逃げてくれたら御の字という感じだし。
そういう役目にこそロボットは最適なんだよな。人間のように面倒臭がらないし、何度同じことをさせられても手を抜かないし、悟ったように『どうせ何をしても無駄』だとか言わないしな。
しかも、<経験>をデータとして同期できるから、今回の若いマンティアンのように同じ個体が別のところに現れても、きちんと対処できる。
今回はちゃんと逃げてくれたから結果としては最善のものだし、もし襲ってきたとしてもその時はその時で、拾弐号機と対峙した時の彼の癖やパターンについて玖号機もしっかり理解してくれてるから、対応もしやすい。
とは言え、あの若いマンティアンの彼についても、このままじゃいつまで経っても縄張りを得られないで放浪するだけになりそうだな。なんとか他の場所に行って縄張りを確保してくれればと思うものの、それはつまり、そこにいるマンティアンの死と限りなく同義に近いわけで。なんとも悩ましい。
すると、
「だが、敢えて特定の縄張りを持たず、他の個体の縄張りの中を移動しつつ糧を得る生き方をするものも、実はいるんだよ」
専門家であるレックスが、タブレット越しにそう口にした。
「そういうものなのか?」
聞き返す俺に、レックスは、
「例外的な存在というものは、どこにでもいるものさ」
笑みを浮かべたんだ。
『ロクな目に遭わない』
って話だろうな。
それについて俺なんかは、
『さっさと別の地域に移ればいいのに』
と思ってしまうんだが、それは所詮、<神の視点>を持つからこその発想だろう。彼にしてみれば、
<丈の縄張り>
<淕の縄張り>
<玲やメイの活動範囲>
<鋭の活動範囲>
と、場所を移してるつもりなんだろうし。ただそれがことごとく<ハズレ>なだけであって。
こういう時、<言葉>で警告を出せないのは不便だよ。いや、メイトギアがいればマンティアンの言語を解析して話すことも不可能じゃないが、野生のマンティアンの場合、
『言葉で相手を追い払う』
という習慣がないからな。
『これからここには近付くな』
とか言ったところで何のことかすら理解できないだろうし。
そもそもそういう概念がないから、それを示す言葉もないわけで。
『くるな』
『近付くな』
的なニュアンスを持つ<発声>はあっても、<単語>としては存在してないようだ。
だから結局、接近する度に追い払うしかないんだよ。
野生動物が人間の住む場所に近付くような事例についてもそうだろう? とにかく近付く度に追い払うしか手はない。その中でたまたま遠くに逃げてくれたら御の字という感じだし。
そういう役目にこそロボットは最適なんだよな。人間のように面倒臭がらないし、何度同じことをさせられても手を抜かないし、悟ったように『どうせ何をしても無駄』だとか言わないしな。
しかも、<経験>をデータとして同期できるから、今回の若いマンティアンのように同じ個体が別のところに現れても、きちんと対処できる。
今回はちゃんと逃げてくれたから結果としては最善のものだし、もし襲ってきたとしてもその時はその時で、拾弐号機と対峙した時の彼の癖やパターンについて玖号機もしっかり理解してくれてるから、対応もしやすい。
とは言え、あの若いマンティアンの彼についても、このままじゃいつまで経っても縄張りを得られないで放浪するだけになりそうだな。なんとか他の場所に行って縄張りを確保してくれればと思うものの、それはつまり、そこにいるマンティアンの死と限りなく同義に近いわけで。なんとも悩ましい。
すると、
「だが、敢えて特定の縄張りを持たず、他の個体の縄張りの中を移動しつつ糧を得る生き方をするものも、実はいるんだよ」
専門家であるレックスが、タブレット越しにそう口にした。
「そういうものなのか?」
聞き返す俺に、レックスは、
「例外的な存在というものは、どこにでもいるものさ」
笑みを浮かべたんだ。
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