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第四世代

丈編 勝負に執着する感性

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『!?』

突然割り込んできたドローンに若いマンティアンが警戒を見せ、攻撃が鈍る。

メイへの援護はそれで十分だった。素早く身を翻して、若いマンティアンの射程外へと逃れる。

しかもただ逃げるだけじゃなく、あくまで次の攻撃のために体勢を整えるのを目的に間合いを取っただけだ。

今のメイでは決して勝てる相手じゃないが、向こうが自分達を逃すつもりがないことは、本能的に察しているんだろう。

実年齢ではまだ二歳とはいえ、野生の獣でも人間の二歳児程度の知能というものは少なくないはずだ。

だから二歳でそういうことを察せられる点について感心する向きもあるかもしれないが、そんな風に考えてみるとそこまで特異なことではないようにも思えるんじゃないだろうか。

地球人の二歳児の場合だと、人間社会に適応していくために覚えなければいけないことがあまりに多すぎるから、野生の獣としての感性についてはさほど重要視されていないだけで、本質的にはそれくらいできるのかもしれない。

そんな風にも思わされるよな。子供達を見ていると。

しかも、母親のれいとの連携も完璧だ。

このまま二人の勇姿を見ていたいとも思うが、この調子で戦いが長引けば、れいはともかくメイの方のリスクが高くなりすぎるだろうな。

だから今回の経験についてももうこれで十分だろうと感じた。

そして、

「もういい。侵入してきたマンティアンを追い払え」

俺は、待機していたドーベルマンDK-a拾弐じゅうに号機に命じる。

すると、一瞬の躊躇いもなく拾弐じゅうに号機は最大可動に移行し、若いマンティアンの前に躍り出た。

「!?」

瞬間、若いマンティアンの体がビクッと跳ねる。

無理もない。彼にしてみれば二度と会いたくもない怪物にまたも遭遇したんだし。それこそ<悪夢>のようなものだよなあ。

そうなると当然、獲物どころじゃない。未練がましくどうにかしようとするんじゃなく、全力での撤退に切り替えてみせた。

その判断が躊躇なくできるなら、彼にもマンティアンとしての真っ当な人生が送れるだろうさ。

れいとメイも、相手が逃げるのならそれを追うようなことはなかった。

ここで取り逃せばいずれまた襲われることもあるかもしれないが、そういうリスクはここではむしろ日常でしかないからな。襲ってくるのは今回のマンティアンだけとは限らない。

襲われたらそのたびに対応すればいい。むしろここで変に深追いする方がかえって危険というものだ。

れいにもメイにも、<勝負>に執着する感性はない。

自分が生き残れさえすれば、どっちが強いかなどどうでもいいんだよ。

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