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第四世代

丈編 踏んだり蹴ったり

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顔面も例の<天然の装甲>で覆われているとはいっても、他の部分と比べるとさすがに硬さという点では下がる。特に額から上の頭の硬さに比べれば『柔らかい』とさえ言えてしまうだろう。マンティアンにとってはある意味では弱点の一つだな。

そこに的確に高い威力の打撃を加えられれば、マンティアンといえど怯む。

ドーベルマンDK-aやドーベルマンMPMの<タイヤによる打撃>や、ドライツェンの<攻撃用アームによる打撃>に比べれば、生身の生き物のそれではマンティアンの天然の装甲に対しては有効な攻撃になりにくいが、マンティアンとて生き物である以上は弱点や急所と呼ばれるものはいくつかあるというわけだ。

その中でも顔面は、どうしても正面に晒すことになり、攻撃も当てやすい。生き物であるがゆえに解消が難しい部分でもある。

れいはそれをよく承知していた。

マンティアンの外皮をイメージさせる緑色のぴったりしたシャツとレギンスを身に着け、引き締まったバランスのいい肢体を持つ彼女は、実に美しくもあった。

対してメイは、かつて母親のれいもそうであったように服を着るのを嫌がり、常に全裸だった。しかしやはり引き締まってしなやかな印象のあるその体ついては、母親と同じく『美しい』と言って差支えのないものだろう。

とはいえ、野生の肉食動物にとってはそれもただの<肉の塊>に過ぎないわけで、

『美味そう』

にも見えるのかもしれないな。若いマンティアンも、今回は相手が自分と同じくマンティアンであるとは認識できず、『縄張りを狙う』のではなく単純に獲物として狙ってきたのは間違いない。

その<獲物>から思わぬ反撃を受けて、彼も明らかに戸惑っていた。

じょうの縄張りを狙った時も、りくの縄張りを狙った時も、<得体の知れない怪物(ドーベルマンDK-a拾弐じゅうに号機)に邪魔をされて、しかも今回は、ひ弱そうなただの肉の塊に見えた獲物から痛烈な一撃を食らい、まったくもって踏んだり蹴ったりというものだっただろうな。

まあそれも、俺達の集落の周りをうろつくんじゃなくて他の地域に移ればそこまでのことはないはずだから、そちらを選択できないしようとしない彼の判断ミスであるとも言えるか。

もっとも、判断しようにもこんなこと、普通のマンティアンにとってはまったくの<埒外>だろうから、適切な判断ができなくても無理はないさ。メイトギアによる言語の解析を行った上で、

<言葉による警告>

を行ったところで、そもそもそんな経験もないだろうから、やっぱり何のことか理解できないか。

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