上 下
2,085 / 2,554
第四世代

丈編 踏んだり蹴ったり

しおりを挟む
顔面も例の<天然の装甲>で覆われているとはいっても、他の部分と比べるとさすがに硬さという点では下がる。特に額から上の頭の硬さに比べれば『柔らかい』とさえ言えてしまうだろう。マンティアンにとってはある意味では弱点の一つだな。

そこに的確に高い威力の打撃を加えられれば、マンティアンといえど怯む。

ドーベルマンDK-aやドーベルマンMPMの<タイヤによる打撃>や、ドライツェンの<攻撃用アームによる打撃>に比べれば、生身の生き物のそれではマンティアンの天然の装甲に対しては有効な攻撃になりにくいが、マンティアンとて生き物である以上は弱点や急所と呼ばれるものはいくつかあるというわけだ。

その中でも顔面は、どうしても正面に晒すことになり、攻撃も当てやすい。生き物であるがゆえに解消が難しい部分でもある。

れいはそれをよく承知していた。

マンティアンの外皮をイメージさせる緑色のぴったりしたシャツとレギンスを身に着け、引き締まったバランスのいい肢体を持つ彼女は、実に美しくもあった。

対してメイは、かつて母親のれいもそうであったように服を着るのを嫌がり、常に全裸だった。しかしやはり引き締まってしなやかな印象のあるその体ついては、母親と同じく『美しい』と言って差支えのないものだろう。

とはいえ、野生の肉食動物にとってはそれもただの<肉の塊>に過ぎないわけで、

『美味そう』

にも見えるのかもしれないな。若いマンティアンも、今回は相手が自分と同じくマンティアンであるとは認識できず、『縄張りを狙う』のではなく単純に獲物として狙ってきたのは間違いない。

その<獲物>から思わぬ反撃を受けて、彼も明らかに戸惑っていた。

じょうの縄張りを狙った時も、りくの縄張りを狙った時も、<得体の知れない怪物(ドーベルマンDK-a拾弐じゅうに号機)に邪魔をされて、しかも今回は、ひ弱そうなただの肉の塊に見えた獲物から痛烈な一撃を食らい、まったくもって踏んだり蹴ったりというものだっただろうな。

まあそれも、俺達の集落の周りをうろつくんじゃなくて他の地域に移ればそこまでのことはないはずだから、そちらを選択できないしようとしない彼の判断ミスであるとも言えるか。

もっとも、判断しようにもこんなこと、普通のマンティアンにとってはまったくの<埒外>だろうから、適切な判断ができなくても無理はないさ。メイトギアによる言語の解析を行った上で、

<言葉による警告>

を行ったところで、そもそもそんな経験もないだろうから、やっぱり何のことか理解できないか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

処理中です...