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第四世代

丈編 変わり者

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新暦〇〇三八年六月十六日



めいの息子でありじょうにとって甥にあたるえいは、マンティアンとしては生まれた時点から少し、

<変わり者>

だった。他の一般的なマンティアンにはない特徴が見られたからだ。

つの

が生えてるんだ。一般的なマンティアンは、ヘルメットのようにつるりとした頭をしてるのに対して、彼の頭には立派な二本のつのが生えている。

彼の父親である<かく>にも<つののような突起>は生えていたが、えいのほどは大きなそれじゃなかった。

これは、マンティアンの近似種である<クワガタ人間ルカニディア>にも見られる外見上の特徴だ。

もっとも、クワガタ人間ルカニディアのそれは、名称の由来ともなったくらいに、

<クワガタの顎>

を連想させるものだったが、えいのはそこまでじゃない。

<鬼>

と言われて連想するような感じのつのだ。おそらくこれも<先祖返り>の一種なんだろう。遺伝子を調べると、マンティアンはルカニディアから枝分かれして誕生した種だというのが分かるしな。

なお、逆にルカニディアには、マンティアンのそれのような立派な<鎌>はない。両手の小指が変形して小さな鎌状になっているだけで。それが突然変異により大きくなり、さらにつのを失った個体がいたんだろう。

加えて、基本的には木の実や果実を主食として、他にはわずかに昆虫や小動物を食べることもある雑食性だったのが、マンティアンとして種が確立されるにつれて肉食に偏っていったんだと推測されている。

獲物を確実に捕らえるのに都合のいい武器も手に入ったからかもしれない。マンティアンの鎌はそれだけ強力なんだ。

しかもそれに伴って気性も攻撃的になっていったのかもな。なにしろルカニディアはマンティアンよりもずっと温厚な種族だし。

ルカニディアは俺達が住んでいる地域からはかなり離れたところでドローンによる調査で発見されただけなので、俺は自分の目で直にその姿を見たことはない。ないが、えいは、見た目だけでなく気性もルカニディアに近いのかもしれないなとは感じる。

もちろん、基本的には生きた獲物しか食べないという点ではマンティアンそのものなんだが、昆虫や小動物しか狙わないし。一度に食べきれないような大きな獲物は狙わないんだ。だからおそらく、<共食い>もしないんだろう。それを窺わせるような様子はこれまで見られたこともないし、バイタルサインの点でも確認されたことはないんだ。

それもあってか、メイの子育ての真っ最中であるれいは、普通のマンティアンほどは、雄であるえいを警戒していないな。

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