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第四世代

丈編 確かに重要

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だが、どれほど馬力があっても、体重そのものについては七十キロをいくらか超えた程度の猪竜シシであれば、今のホビットMk-Ⅱにとっては問題ない。

やはり最大稼働で回り込み、猪竜シシの体に食らいついた若いボクサー竜ボクサー達の隙間を狙って、タイヤによる打撃を叩き込むと、

「ギピィッッ!!」

悲鳴を上げつつ、ついに転倒した。

すると、食らいついていたボクサー竜ボクサー達もさすがに巻き込まれないように咄嗟に離れ、同時に、他の仲間達が倒れた猪竜シシへと食らいついていった。今度は五頭も六頭も。

ホビットMk-Ⅱの打撃を何度もくらってダメージが蓄積していた上でのそれに、ようやく動きが鈍る。なんとか振りほどこうとするものの、

「ビギッ! ビガッ!! ビギャアアッッ!!」

渾身の叫び声を上げながら力を振り絞ろうとするものの、時すでに遅し。

だから、ホビットMk-Ⅱにちょっかいを掛けるんじゃなくて、逃げるべきだったんだよ。せめて『敵わない』と悟ってその時点で全力で逃げるべきだった。そうすればこの結果には至らなかったはずだ。

猪竜シシは確かに無謀な振る舞いをする傾向にはあるものの、決してすべての個体がここまでだったりするわけじゃない。今回のこいつは特に無謀だっただけだ。

ただし、それを、

『愚か』

と切り捨てるのは簡単だが、俺はそこまではしたくないと思う。愚かだと感じるのは確かでも、何もなじる必要はないはずなんだ。

何しろ、自身の無謀さが招いた結果が自らに返ってきてるんだからな。他の誰も被害を受けてるわけじゃない。だったら罵る必要もないだろう?

「ギヒッッ! ヒッッ!!」

なおも生きようともがくものの、どうにもならなかった。それは同時に、ボクサー竜ボクサーにとっては<狩りの成功>を意味する。自分達の命を繋ぐことができた事実を意味する。しかも、犠牲さえ出さずに。

このことは、ホビットMk-Ⅱの力ありきのものであったのは事実でも、それを駿しゅんが活かしてみせたからというのも紛れもない事実なんだよ。それ自体が大したものだと俺は思う。

誇りプライド>なんてものに拘らず、生きるための実利を徹底して求めた結果がそこにはある。

なるほど、<心>というものを発達させてきた人間(地球人)にとっては誇りプライドも確かに重要なんだろう。それをただ蔑ろにしただけでは、今度は精神衛生上好ましくなかったりもするだろう。しかし、誇りプライドに拘る本人が自らの選択の結果を受け止めるだけならまあいいとしても、それに巻き込まれる形になった者にとってはたまったものじゃないというのも、紛れもない事実だろうな。

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