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第四世代

丈編 必殺の一撃

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めいが亡くなったことで空白になった場所に滑り込む形で<たなぼた>的に縄張りを得たとはいえ、どんな形で得たものであっても縄張りは縄張りだ。他の奴に奪われていいわけじゃない。

だから当然、りくとしても自身の縄張りを守ろうとして応戦する。

するが、相手もりくと同じく巣立ったばかりの若いマンティアンらしかったもののかなり血気盛んなタイプだったらしくて、いきなり有無を言わさず襲い掛かってきた。

で、先手を取られる形になった上に、父親と同じくやや気性が穏やかな部分もあると言えるりくは、気勢にも乗れなかったようだ。

「ギキッッ!?」

慌てたように声を上げて、ついつい守りに入ってしまった。

確かにマンティアンの体は<天然の装甲>とでも言うべき強靭な皮膚に覆われ、肉食獣の爪や牙さえ容易には通さないことで守りも<鉄壁>と言ってもいいレベルではありつつ、相手が同じマンティアンであればそれも絶対的な優位とはならない。特に<頭突き>はマンティアンにとっての、

<必殺の一撃>

とも言える強力な武器であって、場合によっては相手のマンティアンの頭さえ砕くことがある。しかも、頭部に比べればまだ守りが薄いとも言える<顔面>を狙われたりすれば非常にヤバい。

実際、めいのパートナーであったかくは、めいに付きまとった若いマンティアンのさくを退けた時に、その顔面が陥没するほどの一撃を加えてとどめを刺したからな。

そんなわけで、決して油断はできないんだ。

だからりくも、非常にピンチだったと言えるだろう。

相手の鎌による攻撃をなんとか凌ぎはしていたものの、見た目にも劣勢なのが分かってしまうような動きだった。じょうから体の使い方を学んでいたからこそかろうじて対処できていただけだ。

それすら、相手の鎌がりくの腕を捉えると、ぐいっと引き付けられて押さえ付けられてしまった。膝が折れて頭が下がる。こうなると上から体重を乗せて圧力を掛けられる方が圧倒的に優位な状態だ。

「ギ……ッ!」

りくもそれは分かっているらしく、なんとか撥ね退けようともがくが、それをするにも相手の力を大きく上回っていないと難しいだろう。ましてや、勢いの点でも先手を取られた状態じゃ……

りく……!」

ドローンのカメラが捉えたその光景に、俺も思わず声が漏れる。そんな俺の意を酌んで、光莉ひかり号のAIがドローンを突撃させて援護を行ってくれた。相手の頭にわざとドローンを衝突させたんだ。

「!?」

突然、何かが頭にぶつかってきたことに相手もさすがに少し怯んだが、しかし状況をひっくり返すことはできなかった。

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