未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
2,052 / 2,646
第四世代

閑話休題 丈の日常

しおりを挟む
じょうはマンティアンである。

同じくマンティアンであるじんの息子で、めいの弟でもある。

そしてマンティアンらしく、とても影が薄い。じんめいも気配を消すのは巧かったが、じょうは二人を上回っているだろう。

それは、

『目立つ振る舞いをしない』

という形でも発揮されていた。

『印象に残る振る舞いをしない』

と言い換えてもいいだろうか。

なんにせよ、実の父親である神河内かみこうち・F・錬是れんぜにとってでさえ、彼についての<思い出>は、娘であるめいよりも圧倒的に少なかった。

だが、当のじょうはそれを気にしたりはしない。マンティアンは、そもそもその種の<親子の情>的なものをほぼ備えていないと言ってもいいくらいに淡白な情緒を持つ種族だった。

もっとも、それはあくまで、

『地球人に比べて』

『地球人の感性では』

という意味ではある。だから、実の父親にとってさえ『印象が薄い』と思われていても気にはしないものの、さりとて『まったくない』というわけでもなかったりするのも事実だった。

加えて、地球人である錬是れんぜを父に持ち、彼の下で家族に囲まれて育ったじょうは、確実に一般的なマンティアンよりは情動というものも持ち合わせていただろう。

ゆえに、自身の<家族>である連是れんぜ達を襲うようなことはしなかった。マンティアンそのものは、たとえ血の繋がった親兄弟であっても共食いさえ行うにも拘わらずである。

そのじょうも、マンティアンとしては<後期高齢者>と言っていい年齢となっていた。他の種族に比べると分かりにくいが、実際にかつての姿と比べると確実に<精悍さ>のようなものは失われている。

が、

「……」

自身の<縄張り>に侵入してきた若いマンティアンを、造作もなく退けてみせた。身体能力的には確実に衰えてきているものの、体の使い方が巧みなのだ。無駄なく最小最短の動きで最大の効果を発揮するのである。

もはやその動きは<戦闘能力を備えたロボット>のようでさえあった。

<老いたマンティアン>と侮っていた相手は、若さに任せた強引さで挑んできたもののわけもなくあしらわれ、うのていで去って行った。

「……」

それをやはり<印象に残らない淡白さ>で見送るじょうの姿は、<強者>という印象さえ抱かせない。それどころか、

『<肉食の猛獣>にさえ見えない』

と言っていいだろうか。

しかしじょうは、そうしてこれまで縄張りを守ってきたのである。それが日常だった。

自身の力で。

そんなじょうの背後に、やはり気配を悟らせない何者かの姿。

明らかに自然物とは思えない成り立ちをしているにも拘らず、まるで最初からそこにあったかのように何かがいたのだった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...