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第四世代

深編 赤ん坊のままでいようとする

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新暦〇〇三八年五月十一日



『機長の指示に従えない乗客は旅客機に乗せられない』

『短慮を起こして他のメンバーを危険に曝すような人間は惑星探査チームには加えられない』

といった程度のことなら、別に当人の命に関わるようなことじゃないさ。

それなのに、旅客機への搭乗を拒否された乗客が、

『人権を無視された!』

だとか言って喚き散らしたりすることもあるだろう? 

惑星探査チームに選出されなかった奴が、

『なんで自分を選ばない!?』

と憤って事件を起こしたりしたことさえあった。

だったら、

『都合のいい社会を築くのに邪魔だから』

という理由で排除されるなんてことになったら、排除される側がどんな行動に出るかくらいは想像がつかないか?

もちろん、その行為そのものは許されることじゃないだろうさ。でもな、『破れかぶれ』『死なばもろとも』と考えてる人間にそんな理屈は通じないのもまた事実だな。

だったら、

『短慮を起こすような奴は排除すれば理想的な社会を実現できる』

なんて考え方そのものが<短慮>ってもんだと分からないか?

『身勝手な奴がいる』

というのは、俺だっていい気はしない。『排除してやりたい』と思ってしまうのも事実だ。そこは気取っても仕方ないのも分かってる。

分かってるが、重要なのは実はそこじゃない。

『<身勝手な奴>というのは、どうしてそんな風になってしまったのか?』

ってのが問題の本質なんだ。

なにしろ、<赤ん坊>ってのはそもそも身勝手な存在だ。親や周りの人間の都合なんてお構いなしで泣き喚いたりする。<我慢>というものを知らないし、『自分を律する』ということができない。

ただ、赤ん坊の場合は、ほんの些細なことで命が危うくなるからこそ、ちょっとした異変を感じただけでも、自身の生命が危うくなっているかもしれないのを周囲に知らせるために、我慢することなく泣くんだ。それ自体が、

<生きるための本能であり機能>

なんだよ。そうしなきゃ、赤ん坊の体に起こってる異変に周囲の人間が気付けずに命を落としてしまうことにだってなりかねない。それじゃ駄目なんだ。

だが、成長するにしたがって、ある程度の耐久性は備わってくるし、自分で対処できるようにもなってくる。だから<我慢>もできるようになっていく。

なのに、赤ん坊と同じように身勝手に振る舞うのがいるのはなぜだ? どうして体が成長しても赤ん坊のままでいようとする?

俺はそこが疑問なんだよ。いい歳をして赤ん坊と変わらない振る舞いをしてられるのがいるのはなぜか、考えるんだ。

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