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第四世代

深編 この世界で生きる上で必要なこと

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新暦〇〇三八年五月四日



ほまれがボスになる以前に、<漁夫の利>的にボスの座に収まった奴がいた。<らい>だ。だが彼はとにかく自己中心的で身勝手で横柄で横暴な奴だった。

その所為で仲間達から嫌われていて、ボスになった途端に反旗を翻らされて、結果、ボスの座を追われ、三日天下で終わったりもしたんだ。そういうことも現にある。

そんならいは、ボスの座を追われると共に群れにもいられなくなって、逃げるように去っていった。

ここの自然の中では被捕食者の立場であるパパニアンが群れから追い出されるということは、限りなく<死>に近付くということでもある。地球人に比べれば途轍もないパフォーマンスを持っているといっても、あくまで『地球人に比べれば』でしかなく、ここでは群れることで身を守るしかない非力な種族だからな。

俺は、<因果応報>や<自業自得>という言葉が嫌いだから基本的には使わないが、まあ確かに横柄で横暴で身勝手だからこそ招いた結果だというのは間違いないだろう。

原因があればこそ結果があるというのも事実だし。

その一方で俺はらいを責めるつもりはないんだ。彼自身は、自らが招いたことですでに報いは受けてるし、俺に彼を責める理由もないしな。なにか被害を受けたわけでもないんだから。

ただ、人間の場合、そういう事例から学んで対処もできるんだから、親や大人が子供にそれを教えないというのが分からない。

それはあれか?

『自分達は教わってないのに、ズルい!』

とでも言いたいのか? その考え方は子供のそれだと思うんだがなあ。少なくともいい歳をした大人の考え方じゃないと思うんだ。

だから俺は、両親が早くに亡くなったこともあって教わってなかったが、それを理由に自分の子供達にも教えないなんてつもりもないけどな。

まあ、いわゆる<会社勤め>みたいな仕事そのものがないからそこまで微に入り細に入り教える必要もないが。

それでも、俺が学んだことについては教えていきたいし、それを教えるのが、自分の身勝手で子供達をこの世界に送り出した親の務めだと思ってる。

むしろそうするつもりなく子供を送り出すのは、無責任にもほどがあるというものじゃないか?

この世界で生きる上で必要なことを親が教えないというのは。

『働く』というのは、人間社会においてはそれこそ<生きる手段>の筆頭だからな。働くことで、

『自身も社会の一員として必要なリソースの一部である』

と示す意味もあるだろう。

だからこそ、正社員であろうがアルバイトであろうが派遣であろうが、<労働者>という意味では何も違わないと教えるべきじゃないのか?

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