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第四世代

深編 ありがたい存在

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新暦〇〇三八年四月二十五日



アルバイトや派遣について、

<軽んじて見下して蔑んでいい立場>

だと考えているなら、当のアルバイトや派遣として働く側自体に、

『どうせ軽んじられて見下されて蔑まれるんだから真面目に働く必要もないだろ』

的な認識が生じてもなんの不思議もないよな。

そこでもし、

『立場に関係なく、真面目に働かないのは甘えだ!』

とか言うのなら、

『立場が人を作る。なんてのは嘘だ』

ということになるんじゃないか? 

だが俺は、

『立場が人を作る。というのはなるほどあるかもしれない』

と思うからこそ雇用形態によって軽んじられたり見下されたり蔑まれたりということがないようにしていきたいとは思ってる。そんなことが蔓延していたら、結局、それに準じた意識しか芽生えないだろうしな。

『それでも真面目に働く』

なんてのは、個人の資質に頼ることになってしまうだろうさ。

人間を育てる努力を放棄し、当人の資質に頼り切るなんてことをしてて、

『自分達は人間だ!』

みたいな大言壮語を吐くのは恥ずかしくないか? 俺は恥ずかしいと思う。

だったら、たとえアルバイトや派遣であっても、『どうせ軽んじられて見下されて蔑まれるんだから真面目に働く必要もないだろ』と考えなくても済むようにはしていきたいじゃないか。

そもそも、<働く>という意味においては、正社員だろうがアルバイトだろうが派遣だろうが何の違いもないはずだぞ? それらは単に雇用形態の違いでしかないんだからな。

『労働を提供し、その対価として賃金を得る』

という本質は、たとえ雇用形態が違っても同じのはずだ。雇用形態が違うのは、その時その時の状況に応じて人員調整がしやすいようにするための仕組みでしかないんじゃないのか?

『人員調整がしやすい』

というのは企業側にとっては<ありがたいこと>じゃないのか? その<ありがたいこと>について軽んじたり見下したり蔑んだりなんてことをするのが、

<人間として好ましい姿>

なのか? だったら、

『親は子供にとってありがたい存在なんだから感謝しろ、敬え』

なんて理屈も成立しないんじゃないか? これまた何度も言ってきたように、人間の親が子供を養育するのは<親の義務>であり、養育してもらえるのは<子供の権利>であり、それは<恩を売れるようなこと>でもなければ<ありがたいこと>でもないはずだと、俺自身が親だからこそ思うんだよな。

そもそも、

<自分が勝手にしたことの尻ぬぐい>

でしかないはずなんだ。親が子供を育てるってのは。

それでも、

『ありがたいことなんだから感謝するべき』

と言うのなら、

<人員調整が容易になるありがたい存在>

に対しても感謝するべきだよなあ。

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