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第四世代

深編 神の御業

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新暦〇〇三八年四月二十二日



神話や伝説と言われるものの多くは、人間の力じゃどうにもならない自然現象などについて、

<神の仕業>

<神の御業>

として表現したものだと言われているな。だがそれらのほとんどは実際には単なる物理現象であることが解明されて、<神>の存在はことごとく否定されていった。

だが、科学がどれほど進んでもいまだに解明されないこともあって、だからこそそこに<神の存在>を感じてしまう者もいるんだとか。

まあ確かに、あの不定形生物が発揮してみせてる<物理書換え現象>なんかはそれこそ地球人の力の及ぶところじゃないらしいけどな。

とはいえ、俺はあれを<神の御使い>みたいには思わない。あれの存在に<神の気配>を感じたりもしない。

あれはただの、

<地球人とは別の文明を築いた者達の遺物>

だと思ってる。地球人ではまだ到達できてない段階の科学技術を持っていたな。

しかし今の時点では、あの不定形生物と、シモーヌ達の証言にあった、

<人間に対してやたらと敵意や憎悪を向けてくる存在の気配>

くらいしかそれを窺わせるものがないから、正直、神話や伝説の類とそう変わらないかもしれないが。

とはいえ、俺は自分に理解できないことだからといってオカルトをこじつけて分かったような気になるつもりもないさ。

『分からないことは分からない』

でいいんだよ。

『分かったようなふりをする』

のはむしろ厄介事の元だ。仕事でもそうだろう? 分かってないのに分かったつもりでやろうとしてかえって面倒なことになったり、大きなトラブルに繋がったりということがあるよな? 仕事なら分かるまで説明してもらったり教わったりすればいいかもしれないにしても、あの不定形生物のような存在については、今の俺達にはあれがなんなのか解明する手段さえない以上、分からないままで無謀な真似をするのはただの自殺行為だろうな。

こちらから近付いていこうとしなきゃ、たまに<怪物>に変化して災禍をもたらすだけの存在であることについては分かってるし、<怪物>そのものの対処についても、徐々にノウハウが蓄積されつつある。なら、それでいいだろう?

理解できないものにオカルトで理屈をこじつけて理解できたように考えるのは、仕事を理解できてないのに自分で勝手な解釈を加えてそれをしようとするのと似たようなものだと俺は感じてる。

しんの振る舞いについても、俺には分からなくても、彼女には彼女なりの意味があってやってることなんだろうし、こちらにとって何か害がないならそのまま受け止めておけばいいさ。

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