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第四世代

深編 もったいないという気持ち

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新暦〇〇三八年四月十六日



どれほどサポート体制を整えても、以前の萌花ほのかの件のように<エアポケットのごとき状況>というものは生じることもあるだろう。

しかしだからといってなにもしなかったんじゃそれこそただの怠慢だしな。怠慢で犠牲を出すとか、愚かにもほどがある。

と、俺は思う。

だったら当然、必要なことはしなきゃと思うんだ。だが、そのためにもリソースを消費することになるわけで。

その事実がある以上、つまらない諍いによって無駄にリソースを浪費することも、やはり愚かにもほどがあると俺は感じる。

そしてこれは、戦争とかいう大規模な衝突に限ったことじゃなく、日常的な範囲のトラブルについてもそうなんだ。何しろ、実際に個人間の衝突についてもロボットは監視してくれていて、しかしその中で破損したりして無駄に浪費されている部分も間違いなくある。

地球人はそういう部分について考えることはなかった。考えてる者もいないわけじゃなかったにしても、決して一般的じゃない。いい歳をした大人でさえそうだ。そんなことを考えようとすること自体、

『いちいちそんなこと考えてられるか!』

とか言って見下す傾向すらあったが、いやいや、

<物事をちゃんと考えてる大人>

の言うことか? それが。むしろ考えたくないからそんなことを言うんだろう?

それ以前に、自分がリソースを浪費してるという自覚はほとんどなかっただろうな。だが、生きる上で必要なそれを上回るものを無駄にしてたってのもやっぱり間違いないんだよ。

『ものを大事にしろ』

『もったいないという気持ちを大事にしろ』

などと言いつつ、自分は苛立ったらものにあたって壊したり、

『自分では<もったいないという気持ち>を大事にしているつもりでいながら自分からは見えないところでどんなに浪費されてようが気にしない』

なんてのは、

『もったいないという気持ちを大事にしているつもりの自分に酔っている』

だけでしかないと思うんだがなあ。

俺がまだ地球人社会で暮らしていた頃でも、

『子供に買い与えたメイトギアの所為で子供が遊び惚けて勉強もしなくなった!』

とキレた親が子供の世話のために用意したメイトギアを破壊したというのがネットで話題になってたりしたな。

『子供の躾にはそれくらい厳しくする必要がある!』

とか言うのもいたが、

『いや、『ものを大事にしろ』とか言ってる親が目先の感情に振り回されてものを大事にしなかったのは事実だろう?』

としか思わなかったなあ。俺は。

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