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第四世代
深編 事情がまったく違う
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<同じ言葉を話していてもコミュニケーションとしては成立していない相手>
ってのは、地球人社会でも割と日常的に周りにいたんじゃないか? とにかく自分の考えでしか物事を見ず、理解しようとせず、
『自分の考えこそが正しいからそれ以外についてはまったく考慮する必要もない』
的な振る舞いをする奴が。
こうなるともう、いくら同じ言葉を話していてもそもそも<会話>にならないし、当然、コミュニケーションも取れてない。
以前にも言ったと思うが、<コミュニケーション>というのは、双方向であってこそ成立するものであって、一方的に押し付けようとしてるのはコミュニケーションじゃないよな。
<人の話を聞かない奴>
も、当人がどんなに陽気で社交的に見えても、実際には<コミュニケーション障害>を起こしてるだけだよな。
とにかく、他者に対して一方的に関わろうとするのはコミュニケーションじゃない。
メイトギアはそれをきちんと承知してる。そういう形でアルゴリズムが形成されている。最初に組まれたアルゴリズムに加え、その後に実際に人間と関わることで<現実のデータ>として蓄積され、解析され、ノウハウという形で利用されている。
メイフェアはそんなメイトギアの機能をフル活用して、
『自分達とは別の<何か>ではあるが、仲間でもある』
と、誉の群れの者達に認められてきたわけだ。
ただし、誉とだけは事情がまったく違う。
幼い頃、調子に乗って、他のパパニアンの群れの縄張りで、自身の縄張りを主張する<雄叫び>を上げていたことで敵視されて攻撃された誉は、それから逃れるために密林の中を当てもなく逃げ回った挙句、密林から外れた岩場の洞窟に隠れ、そこで機能のほとんどを休止させた状態で<眠り>についていたメイフェアと出逢ったんだ。
メイフェアの方は、メインのバッテリーは劣化しきっていたものの、サブバッテリーであるキャパシタにわずかに残された電力で誉に話し掛け、彼を保護してくれたんだよな。
だから誉にとってメイフェアは<命の恩人>であり、実の母親である密が亡くなった後は<母親代わり>でもあった。そういう意味で、他のパパニアンとの関係性とはまったく別物だとも言える。誉自身、メイフェアを母親だと思ってる節もある。
しかも、その<母親>を彼はとても慕っていたし、頼りにしていた。そんなメイフェアに言われては、別に群れに危険が及ぶような話でもない以上は無下に断ることもない。必要もない。
そうして彼は、
「ここで待っててくれ」
と、パパニアンの言語で、パートナーである碧に告げて、老いた体を動かしたのだった。
ってのは、地球人社会でも割と日常的に周りにいたんじゃないか? とにかく自分の考えでしか物事を見ず、理解しようとせず、
『自分の考えこそが正しいからそれ以外についてはまったく考慮する必要もない』
的な振る舞いをする奴が。
こうなるともう、いくら同じ言葉を話していてもそもそも<会話>にならないし、当然、コミュニケーションも取れてない。
以前にも言ったと思うが、<コミュニケーション>というのは、双方向であってこそ成立するものであって、一方的に押し付けようとしてるのはコミュニケーションじゃないよな。
<人の話を聞かない奴>
も、当人がどんなに陽気で社交的に見えても、実際には<コミュニケーション障害>を起こしてるだけだよな。
とにかく、他者に対して一方的に関わろうとするのはコミュニケーションじゃない。
メイトギアはそれをきちんと承知してる。そういう形でアルゴリズムが形成されている。最初に組まれたアルゴリズムに加え、その後に実際に人間と関わることで<現実のデータ>として蓄積され、解析され、ノウハウという形で利用されている。
メイフェアはそんなメイトギアの機能をフル活用して、
『自分達とは別の<何か>ではあるが、仲間でもある』
と、誉の群れの者達に認められてきたわけだ。
ただし、誉とだけは事情がまったく違う。
幼い頃、調子に乗って、他のパパニアンの群れの縄張りで、自身の縄張りを主張する<雄叫び>を上げていたことで敵視されて攻撃された誉は、それから逃れるために密林の中を当てもなく逃げ回った挙句、密林から外れた岩場の洞窟に隠れ、そこで機能のほとんどを休止させた状態で<眠り>についていたメイフェアと出逢ったんだ。
メイフェアの方は、メインのバッテリーは劣化しきっていたものの、サブバッテリーであるキャパシタにわずかに残された電力で誉に話し掛け、彼を保護してくれたんだよな。
だから誉にとってメイフェアは<命の恩人>であり、実の母親である密が亡くなった後は<母親代わり>でもあった。そういう意味で、他のパパニアンとの関係性とはまったく別物だとも言える。誉自身、メイフェアを母親だと思ってる節もある。
しかも、その<母親>を彼はとても慕っていたし、頼りにしていた。そんなメイフェアに言われては、別に群れに危険が及ぶような話でもない以上は無下に断ることもない。必要もない。
そうして彼は、
「ここで待っててくれ」
と、パパニアンの言語で、パートナーである碧に告げて、老いた体を動かしたのだった。
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