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第四世代

深編 誉の群れの一員

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新暦〇〇三八年三月二十日



この日も、しんは食事のために密林に入っていた。

すると、

しん様。お久しぶりです」

「……」

不意に声を掛けられてそちらを振り向いた。メイフェアだった。ほまれを主人(仮)として仕えているメイフェアは、これまでずっとほまれ達と行動を共にしていた。今ではすっかり、

ほまれの群れの一員>

として認められた彼女に、子供達がまとわりついていた。しかし、

「ぎゃあっ!!」

「ぎあっ!!」

すぐ近くに<外敵>が現れたことに気付いて慌てて樹上に逃げる。

しんだ。パルディアによく似たレオンであるしんは、パパニアンにとってはただの<恐ろしい外敵>だからな。メイフェアはそうじゃない事実を理解していても、子供達には当然分からない。この反応は当たり前だ。

メイフェアはしんが近付いていることを承知していたが、子供達に、

<外敵に不意に遭遇した場合の対処>

を学ばせる機会の一つだと考えて敢えて避けることをしなかったんだ。そしてそれはしっかりと功を奏した。

人間と違って成長しても言葉で詳細な情報を理解するということができない野生のパパニアンの場合、こういう<経験>によって必要なことを学んでいくわけだな。

地球人にとっては<スパルタ>とも言えるであろう方法も、パパニアンにとってはそこまでじゃないわけだ。

これも何度も言ったと思うが、人間の場合は、

<恨みを忘れないという習性>

が強いことで、過剰に厳しくするとそれ自体が<諍いの種>になってしまうのに対して、パパニアンはまあある程度で忘れてしまうし、何より、地球人と違って<報復>や<復讐>や<仕返し>のための手段が豊富じゃない上にもし報復や復讐や仕返しを行うとしてもあまりに強力な方法を使うことができないことで影響が限定的というのが大きい。

地球人のように報復や復讐や仕返しのために<大規模テロ>のようなことを実行しないしできないからな。

『そこまで深刻に考えなくてもいい』

というのは間違いなくある。

でまあ、それは余談ではあるものの、いずれにせよ、

『メイフェア自身が子供達の教育についても任されることがある』

程度には群れから信頼を得ているということだ。最初は遠巻きにされて、時には石や木の実を投げつけられたりするなんてのもありつつ、ロボットゆえにそれを苦にすることもなく、

ほまれを守るための必要なサポート>

として群れに関わってきた結果がこれということだな。

そんなメイフェアに対しても、

「……」

しんの態度は素っ気ない。ないが、メイフェアがそれを気にすることはない。

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