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第四世代

深編 それは許されてる

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そんな<イベント>もありつつ、まどかも<朋群ほうむ人>として<人間>として成長してくれている。

集落に帰ってくると、

「おいで、萌花ほのか♡」

<血の繋がらない妹>である萌花ほのかに対しても笑顔で手を伸ばしてくれて、

「おねちゃ♡」

『お姉ちゃん』と声を上げて飛び付いてきた萌花ほのかを抱きとめてくれる。その上で、

「ただいま」

ひなたうららにも挨拶してくれた。

当然、わだかまりはあるだろう。吹っ切れたわけじゃないだろう。しかし、少なくとも今は笑顔を向けることができてるんだから、一安心だ。

これからも、今回と同じようにして距離を取ろうとするようなことは何度もあるんじゃないかな。<恋心>みたいなのはなかなかに複雑らしいしな。俺自身、シモーヌのことを愛しながらもエレクシアを愛しているし、ひそかじんふくようのことも今でもしっかり愛してる。毎日、墓に向かって挨拶をせずにいられない程度には、な。

俺がそうなんだから、まどかが自分の割り切れない気持ちにモヤモヤしてついつい勝手に集落を抜け出してしまうくらいのことは、

<そういうもの>

として受け止めるさ。

そのための体制を整えようとしてるんだしな。

地球人社会じゃよく、

『他人の気持ちが分かるようになりなさい』

『他人の痛みが分かるようになりなさい』

なんてのがまるでスローガンのごとく語られたりしてきたが、本当に『他人の気持ちが分かる』なら、『他人の痛みが分かる』なら、まどかがそういう行動に出てしまう気持ちや、そうせずにいられない心の痛みについても理解できるってことだよな? 違うか?

もしそんなことを言ってる奴がまどかの振る舞いについて批判的なことを口にしたら、それは彼女の気持ちも痛みも分かってないってことだろうさ。

俺は、<他人の気持ち>も<他人の痛み>も分からない。そんなものが分かるなんて嘘は吐かないし大言壮語も口にするつもりはない。ないが、だからといって想像することさえ放棄するつもりはないんだ。ゆえに見守る。

まどかひなたうららの関係にしても、どうなるかは本人達次第だ。俺達の方からああしろこうしろとは言わない。それに、自分の感情ばかり優先して誰かを傷付けるような真似はしないようにと手本も示してきた。攻撃性を発揮するのは、外敵の襲撃を退ける時だけでいい。仲間内でそんなものを発揮する必要はない。

これによってまどかが傷付くことがあった時には、彼女の傷ごと受け止めるさ。泣きたいなら泣けばいいし、落ち込みたいなら納得するまで落ち込めばいい。俺達の間ではそれは許されてる。

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