1,983 / 2,645
第四世代
深編 馬鹿馬鹿しいほどシンプル
しおりを挟む
そうして、陽と麗の仲がいいことに拗ねて一人で密林の中を<散歩>していた和を、ドローンのアシストを受けながらホビットMk-Ⅱがついていく。
と言っても、そのままじゃまったくついていくことさえできていない。ドローンが彼女の位置を確実に捉えて常にホビットMk-Ⅱと情報共有しているから、彼女が立ち止まったり、方向転換した時にショートカットすることでかろうじて追いつけるだけではある。
これがドーベルマンDK-aならそのままでもなんとかついていけるんだが。
彼女を追って密林の中を駆けていくホビットMk-Ⅱの姿は、もはや<健気>でさえあるか。そんなホビットMk-Ⅱを気遣わない和のことを批判的に見る人間(地球人)さえいそうなくらいにはな。
でも、そうじゃないんだ。人間が道具であるロボットを気遣い過ぎるというのは、むしろ本末転倒なんだよ。特に、実年齢じゃまだ十歳でしかない和がそこまで配慮できる方がおかしいさ。光なんかは配慮もできるが、それはあくまで光が、
<経験を重ねて様々な配慮ができるようになった大人>
であるからこそのものだしな。
そういうもののはずなんだ。
体こそすっかり<地球人の成人>と同じそれになった和であっても、十歳じゃさすがに。
パパニアンとして生きる分にはもう十分な能力はある。実年齢で七歳や八歳でもう立派な<成体>になるパパニアンとしてなら。子供だって産めるし育ててもいけるだろう。だが、<人間>はそうじゃないんだよな。
今のここの社会なら、問題なく生きていくこともできるさ。仕組みも制度も、ほとんどないに等しいここでは、覚えなきゃいけないことも地球人社会に比べれば比較するのも馬鹿馬鹿しいほどシンプルだし。地球人社会においても十代半ばで成人として認められるような社会だった頃は、その後の異様なまでに複雑化して覚えなきゃいけないことがとんでもなく増えた社会と比べればやっぱりシンプルだったからこそ、そんな年齢でも成人としてやっていけたんだろうし。
その違いを理解もせず、
『昔は十代半ばで大人として生きられてた!』
みたいなことを言う奴の方こそが現実を見てないってもんだろうな。俺はそうとしか思わない。
だからこそ、和が子供っぽい未熟さを見せても、そのこと自体を責めるつもりはないんだよ。それどころか、彼女を責められるほど俺は立派な人間じゃないという事実しかないわけで。
それをわきまえてるとな、『頭ごなしに怒鳴ったりとかする』のがいかに幼稚かってのが分かるというもんだろ。
と言っても、そのままじゃまったくついていくことさえできていない。ドローンが彼女の位置を確実に捉えて常にホビットMk-Ⅱと情報共有しているから、彼女が立ち止まったり、方向転換した時にショートカットすることでかろうじて追いつけるだけではある。
これがドーベルマンDK-aならそのままでもなんとかついていけるんだが。
彼女を追って密林の中を駆けていくホビットMk-Ⅱの姿は、もはや<健気>でさえあるか。そんなホビットMk-Ⅱを気遣わない和のことを批判的に見る人間(地球人)さえいそうなくらいにはな。
でも、そうじゃないんだ。人間が道具であるロボットを気遣い過ぎるというのは、むしろ本末転倒なんだよ。特に、実年齢じゃまだ十歳でしかない和がそこまで配慮できる方がおかしいさ。光なんかは配慮もできるが、それはあくまで光が、
<経験を重ねて様々な配慮ができるようになった大人>
であるからこそのものだしな。
そういうもののはずなんだ。
体こそすっかり<地球人の成人>と同じそれになった和であっても、十歳じゃさすがに。
パパニアンとして生きる分にはもう十分な能力はある。実年齢で七歳や八歳でもう立派な<成体>になるパパニアンとしてなら。子供だって産めるし育ててもいけるだろう。だが、<人間>はそうじゃないんだよな。
今のここの社会なら、問題なく生きていくこともできるさ。仕組みも制度も、ほとんどないに等しいここでは、覚えなきゃいけないことも地球人社会に比べれば比較するのも馬鹿馬鹿しいほどシンプルだし。地球人社会においても十代半ばで成人として認められるような社会だった頃は、その後の異様なまでに複雑化して覚えなきゃいけないことがとんでもなく増えた社会と比べればやっぱりシンプルだったからこそ、そんな年齢でも成人としてやっていけたんだろうし。
その違いを理解もせず、
『昔は十代半ばで大人として生きられてた!』
みたいなことを言う奴の方こそが現実を見てないってもんだろうな。俺はそうとしか思わない。
だからこそ、和が子供っぽい未熟さを見せても、そのこと自体を責めるつもりはないんだよ。それどころか、彼女を責められるほど俺は立派な人間じゃないという事実しかないわけで。
それをわきまえてるとな、『頭ごなしに怒鳴ったりとかする』のがいかに幼稚かってのが分かるというもんだろ。
0
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説


学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる