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第四世代

深編 賢い王

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新暦〇〇三八年三月三日



すいがフォルトナと育ててる様子や、清良せいらがカルラを育ててる様子や、ライラとオルトが水帆みなほの世話をしてくれてる様子や、れいがメイを育てている様子や、そして錬慈れんじが朗らかでいてくれてる様子を見て、俺は思案する。

『俺の家族が穏やかに生きていられる世界を作るにはどうすればいい?』

というのをな。

たとえもし俺が<賢い王>だったとしても、その俺は永遠には生きられない。いずれ死ぬ。ひかりあかり、そして錬慈れんじ以外の子供達は確かに俺が生きている間に生涯を閉じるだろう。人生を見届けることもできるだろうし、俺が守ってやることもできるかもしれない。しかし、ひかりあかりは、わずかとはいえ俺より生きる可能性があるし、錬慈れんじはそれこそ何かの形で命を落としでもしない限りは俺より生きるだろうなあ。

だから俺だけが<賢い王>でいればいいわけじゃないんだ。

なるほど、ひかりはすでに俺より<ボス>として優秀ではあるさ。この集落や家族を守る上では彼女に任せておけばいいと思う。

でもな、<小集団のボス>と、<社会を差配する為政者>や、<社会システムを構築していく者>はまた別なんじゃないのか?

この辺りも、エレクシアがサポートしてくれれば何とかなるかもしれない。俺がこうしてられるのだってエレクシアや光莉ひかり号やコーネリアス号のAIのサポートがあればこそだしな。

しかしそれも<永遠>じゃないんだ。ここから数百年の間はサポートもしてくれるんだとしても、『いつまでも』というわけじゃない。『未来永劫』稼働し続けられるわけじゃない。いつかは限界が来て、頼ることができなくなる。その時に、エレクシア達のサポートもなく上手くやれる<賢い王>が誕生するという保証はあるのか?

ないよな? そんなものがあったら、地球にも、

<理想的な独裁国家>

いうのがここまで続いてきてるはずだよな?

でも、そんなものが存在しているという事実はない。六十世紀になっても、AIやロボットのサポートがあってこそ概ね平穏に暮らしていける社会は実現できていても、それでもなんだかんだと不満や不服はあるし、今の社会の転覆を画策する連中だっていないわけじゃない。

結局はそういうもんなんだよ。

だからこそ、考えなきゃいけないんだ。

<ぼくがかんがえたさいきょうのりそうのしゃかい>

は、フィクションの中にしか存在しない。それが現実だ。

『物事をちゃんと考えてる』

なら、それも分かっているはずだよな? 分かるはずだよな? 物事をちゃんと考えればこそ、な。

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