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第四世代

彗編 割り切った設計

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いや、<単純な膂力>という意味じゃ、たぶん、パパニアンの方が上だ。なにしろ握力は余裕で二百キロを超えるからな。一般的なパパニアンは。ひそかの娘で俺の血も受け継いでるひかりは若干劣るが、それでも二百キロ近くの握力を誇る。

対してホビットMk-Ⅱは、

『生身の人間(地球人)よりは少し強い』

程度だ。フルパワーを発揮すればそれなりの力は出せても、そうなると今度は機体の方がもたない可能性さえあるから、普段は出力を抑えてるんだ。

そもそも戦闘を前提として設計したドライツェンは別格として、アリスやドーベルマンMPMでさえ、あくまで人間を相手にすることが多いから基本的にセーブしてるだけで、機体の強度的にも野生動物を圧倒するパワーは出せる。

ここでもホビットMk-Ⅱは根本的に違ってるんだよ。

どこまでも、

『生身の人間(地球人)と同等程度のパフォーマンスを発揮できればいい』

と割り切って設計しているがゆえに。ここで得られる材料で作るとその程度にしかできないんだ。

もちろん、機体の強度を上げることでパワーも出せるようにはなる。大昔の<パワーショベル>とか<ブルドーザー>のような形にすれば、生身の野生動物だって圧倒するだろう。

力だけなら。

しかしパワーショベルやブルドーザーで人間の育児や介護はできないからなあ。

そっちはそっちで必要となれば用意することにするさ。ただ、その手の大型機械を作るには材料となるものを大量に生産しないといけなくなるし、製造工場の方のキャパも、今は回転翼機と移動電源の製造で手一杯ではある。

だからまあ、大規模な工事とかを行わなきゃならなくなった時に用意する形でいいだろう。今はとにかく<マンパワー>の確保が先だ。

が、だからこそパパニアンにも舐められてしまうようなロボットになってしまってるのは事実ではある。あるものの、その辺も実際の働きが確保できればまあいいさ。

そんなわけで、パパニアンの攻撃をものともせず、五機のホビットMk-Ⅱは木に登り、自分に迫ってくる<得体のしれない何か>に怯えたパパニアンの雌が、生んだ子を放り出して逃げ出すと、最も近い位置にいた一機が、空中に投げ出されたその子を追ってジャンプ。しっかりとキャッチしたもののそのまま地上へと落下。四本の脚で地面を捉え、機体全体を使って衝撃を受け止めて子供を庇う。

しかしその結果、脚は四本とも折れ、フレームは歪み、見た目にもぐしゃりと潰れてしまったのだった。

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