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第四世代

彗編 自分達でも勝てる

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鬱蒼とした密林の中を、五機のホビットMk-Ⅱが駆け抜ける。メイトギアに比べればはるかに鈍重に思えても、実は生身の人間よりは早くなってきている。<朋群ほうむ製AI>にて制御されているホビットMk-Ⅱでもだ。

しかし、詳細にそのデータを解析すると、光莉ひかり号のAIやコーネリアス号のAIによって制御されている機体に比べ、ほんの数パーセント程度ではあるもののパフォーマンスが低下しているのも確認されている。だから、制御しているAIの性能差がそういうところに顕著に表れているということだ。

が、総合的に見れば、こうして生身の人間(地球人)よりは早く密林の中を走れているという事実がある以上は、十分な性能を発揮していると言ってもいいと思う。いくら上を目指してもメイトギアのそれに届く可能性は現時点ではないから、

『生身の人間(地球人)を若干でも上回る』

のであれば上等と考えるべきだろうな。<マンパワー>として捉えても、本来ならそれで十分なはずなんだ。数さえ揃えられるなら。

その点については、ルイーゼのおかげで様々な鉱脈も発見できたし、H-1(ホビット製造工場)も順調に稼働してくれてるから、総生産数はすでに三百機を大きく超えた。そのうちの百機が、少し生産に時間を要する<水泳部仕様>なので、逆にこの程度の数だとも言える。それでもこれだけいれば、普段の生活のサポートには十分すぎるだろう。

ただし、<不定形生物由来の怪物>の相手をするにはまだまだ心許ないが。前回現れたヒト蛇ラミアまでは何とかなっても、夷嶽いがく牙斬がざん辺りにはまったく安心できない。

いつかまた同等の脅威となるのが現れた時には、やっぱりエレクシア達に頑張ってもらわないといけないだろうな。

なんてことを考えている間にも、五機のホビットMk-Ⅱは現場に到着した。そして木に登って救助に向かう。

が、パパニアン側からすればそれこそ得体のしれない生き物が自分達に迫ってきている形になるから、

「ぎゃーっ! ぎゃーっっ!!」

口々に警告音を発して、木の枝や木の実を投げつけてきて、防衛行動に入った。近くにいるのがマンティアンとかだったら必死に逃げるところなんだろうが、木に登るホビットMk-Ⅱの姿を見て、

『自分達でも勝てる』

と思われてしまった可能性が高い。なにしろこれまた生身の人間(地球人)よりは若干上回っているだろうというだけで、パパニアンらの運動能力に比べても明らかに数段劣ってるからなあ。

単純な膂力でも大差ないんだよ。

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