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第四世代

彗編 性能の底上げ

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新暦〇〇三七年十月二十三日



すいがフォルトナを育てているのを見ながら、俺はこれから作り上げられていくことになるであろう朋群ほうむ人社会についてあれこれ考えるが、当のすい自身は当然、そんなことはどこ吹く風で淡々とフォルトナの面倒を見ている。その姿は普通に<母親>のそれと、ファルケを育てていた時の清良せいらと、何ら変わるところがなかったな。

フォルトナはまだ羽がしっかりしていないから飛ぶこともできなくて何もかもすいにしてもらってる状態だが、羽が生え揃って滑空できるようになれば、すいはその辺りも教えないといけなくなる。しかもそうなってくると一方的に世話をしてるだけでは済まなくなってくる。行動範囲も広がり、できることも増え、それに伴って危険もうなぎ上りに増えるだろう。その時に彼は続けて親として振る舞うことができるだろうか。

そこが問題だ。今のところはペット感覚で世話もしてられるにしても、自分で行動できるようになると自己主張もし始めるだろうからな。自分にとって都合のいいばかりじゃなくなってきたら、それでも<親>でいられるかどうかが分かれ目になってくると思う。ただの、

<ごっこ遊び>

だったかどうかの。

興味本位の気まぐれでやってるだけのことなら、自分の思い通りにいかなくなってくると途端に興が削がれて関心を失うことだって十分に有り得る。

人間の場合は、蓄積された過去の事例から『そういうこともある』とあらかじめ分かっているのにそれに対する心構えや覚悟を持っていないというのは<甘え>になるが、野生の生き物の場合はそういう知識の蓄積がほとんどないからなあ。

だから『あらかじめそういうことを知る』というのもできないが、人間は違う。ゆえに<保護責任者遺棄>などという形で責められる。

しかし、『できない』ものは『できない』し、適性のない者に無理に続けさせるのは非合理的だ。仕組みとして、

<親が育てられない子供を代わりに養育する形>

を用意することはできる。そのためにホビットMk-Ⅱを使って、

<子供の養育シミュレーション>

も行ってきた。今もしっかりと続けている。赤ん坊を育てている事例の他に、<子供役のホビットMk-Ⅱ>も加えた家庭も作り、やはり光莉ひかり号やコーネリアス号のAIやエレクシアに蓄えられたデータを基にしたシミュレーションも行っている。

これによって得られたデータをフィードバックしてホビットMk-Ⅱの、

<人間のサポートを行うロボット>

としての性能の底上げを図っていくんだ。親が育てられない子供を養育できるくらいにまで。

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