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第四世代

彗編 どちらも間違っちゃいない

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新暦〇〇三七年十月九日



そうだ。画一的な価値観ですべての人間を縛ろうとする試みは、地球人社会の歴史の中で一度たりとも成功した事例はない。

『独裁者がそれを実行しようとして、しかし結局は破綻して』

の繰り返しだったはずだ。

これは、<民主主義>においても同様だ。民主主義社会でも全員が同じ価値観を持って完璧な調和を保って生きていられたという時期はないに等しいとも言われている。

だからそもそもそういうことなんだよな。野生の生き物でもそうだ。<例外的な存在>というのは常にあって、むしろそれが存在するということ自体がある意味では<正常>なんだよ。

これは結局、人間でも変わらない。<野生の本能>云々以前の、

<生物としての仕組み>

そのものが<多様性>の上に成り立ってるらしい。どのような状況に陥ろうとも全滅を避けるために仕掛けられたものだとも言われている。

それでもなお絶滅に至った種も数多くあるものの、

『無数の種がある』

ということ自体がすでに、

<生物という存在が生き残るための戦略>

とも言えるわけで、

『生物そのものが消えてなくなっているわけじゃない』

事実がある以上は、実際に功を奏しているわけだ。そして今、地球人類は太陽系さえ飛び出して宇宙に広まりつつあり、たとえ太陽系自体が消滅してもなお人間をはじめとした多くの生物が生き延びる可能性を得ているよな。

まあそれさえ、この<宇宙>そのものが消滅すれば消えてなくなるかもしれないにせよ、少なくともそこまでは存在し続けるだろう。

いや、もしかするとそれこそ宇宙そのものさえ飛び越えるのが出てくるかもしれないな。この宇宙が消滅しても別の宇宙に逃げ延びて、それどころか、

『別の宇宙を作りだして』

しまったりするかもしれない。

そのような可能性を生み出すのも、『生物ならでは』か。石や金属はそこまでしないだろうし。

なんてことを考えれば、やっぱり、<多様性>というものを否定するのは生物そのものを否定することにもなるんだろう。だから、『他者を攻撃する』ことさえ避けてもらえるなら、どういう考えを持とうが排除されるいわれはないだろうし、結婚についてもそうかもしれない。

すいがフォルトナを育ててるのも、

『子育ては雌しかしない』

というアクシーズの一般的な生態からは外れているとしても、否定されるべきことじゃないと思う。

清良せいらとだけ子を生すすいと、複数の雌との間に子を生しているりょうとは、ある意味では真逆の存在でありつつ、どちらも間違っちゃいないんだろうさ。

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