1,913 / 2,645
第四世代
彗編 死を理解できなかった
しおりを挟む
新暦〇〇三七年十月八日
楼羅が死んだ時には、翔はその死を理解できなかっただけで、だからそれまでと同じように世話をしようとしていただけで、
『死を悲しんでた』
わけじゃないのが、今思い返してみても分かる。なにしろ、楼羅がもう動かない乳も飲まない成長しないというのが理解できたのか、ミイラ化した我が子を放り出していたわけだし。
そうだ。あくまで生きてるものとして接しようとしていただけだ。
他にも、深が生きて生まれてこれなかった連を胎盤と一緒に食ってしまったのも本質としては同じだろう。そもそも生きて生まれてこれなかったんだから深としては『命として認識できなかった』だけだと思う。
<死>というものに対する認識がそもそも人間(地球人)と違うんだ。
泰がもう動かないと感じた時に翔はそれを悲しんだんだとしても、丁寧に巣から下ろして悼んだんだとしても、他の獣に食われるままにした辺り、これまた人間(地球人)とは違ってるわけで。
まあ、地球においても、<鳥葬>や<風葬>といった形で敢えて遺体を放置する風習を持つ者達もいたらしいが、やっぱり一般的とは言い難いしな。
<死>というものを日常から切り離そうとした<人間>は、もはや野生とは完全に決別したんだと思う。だからこそ、野生としての本能を言い訳に使うのは俺は違うとしか思わないんだ。卑劣だとしかな。
その辺りのことも、改めて考えいかなきゃいけないと実感させられた。
と同時に、地球人社会において<結婚>というものが本当にまともに機能していたのかというのも改めて疑問に感じたな。
翔のパートナーの泰や、明のパートナーの角は、生涯、翔や明と添い遂げてくれたが、彗も清良以外の雌には興味を示さないが、だからといってそれが<正しい姿>だと断定もできない。むしろ<例外的な事例>と言った方がいいだろうというのも事実だ。
地球人も、相手を独占するために<婚姻制度>を作り出したもののそれは必ずしも成功していたとは言い難いという印象は強くある。
だから朋群人社会では婚姻制度は敢えて取り入れない方がいいような気もするんだ。
そもそも、
『他者を自分の所有物と見做す』
みたいな考え方に無理がある気がするしな。相手を人間と認めればこそ所有物と考えるのは違うんじゃないかと思えて仕方ない。
もちろん、互いに『その人だけ』を愛することができるならそうすればいいさ。泰や角や彗のように。でも、そうじゃない者にそれを強要することが本当に好ましいのか? 自分一人だけを愛することができない相手だったら、それを受け入れるか、受け入れられないなら諦めるか、そのどちらかだと思うんだけどな。
楼羅が死んだ時には、翔はその死を理解できなかっただけで、だからそれまでと同じように世話をしようとしていただけで、
『死を悲しんでた』
わけじゃないのが、今思い返してみても分かる。なにしろ、楼羅がもう動かない乳も飲まない成長しないというのが理解できたのか、ミイラ化した我が子を放り出していたわけだし。
そうだ。あくまで生きてるものとして接しようとしていただけだ。
他にも、深が生きて生まれてこれなかった連を胎盤と一緒に食ってしまったのも本質としては同じだろう。そもそも生きて生まれてこれなかったんだから深としては『命として認識できなかった』だけだと思う。
<死>というものに対する認識がそもそも人間(地球人)と違うんだ。
泰がもう動かないと感じた時に翔はそれを悲しんだんだとしても、丁寧に巣から下ろして悼んだんだとしても、他の獣に食われるままにした辺り、これまた人間(地球人)とは違ってるわけで。
まあ、地球においても、<鳥葬>や<風葬>といった形で敢えて遺体を放置する風習を持つ者達もいたらしいが、やっぱり一般的とは言い難いしな。
<死>というものを日常から切り離そうとした<人間>は、もはや野生とは完全に決別したんだと思う。だからこそ、野生としての本能を言い訳に使うのは俺は違うとしか思わないんだ。卑劣だとしかな。
その辺りのことも、改めて考えいかなきゃいけないと実感させられた。
と同時に、地球人社会において<結婚>というものが本当にまともに機能していたのかというのも改めて疑問に感じたな。
翔のパートナーの泰や、明のパートナーの角は、生涯、翔や明と添い遂げてくれたが、彗も清良以外の雌には興味を示さないが、だからといってそれが<正しい姿>だと断定もできない。むしろ<例外的な事例>と言った方がいいだろうというのも事実だ。
地球人も、相手を独占するために<婚姻制度>を作り出したもののそれは必ずしも成功していたとは言い難いという印象は強くある。
だから朋群人社会では婚姻制度は敢えて取り入れない方がいいような気もするんだ。
そもそも、
『他者を自分の所有物と見做す』
みたいな考え方に無理がある気がするしな。相手を人間と認めればこそ所有物と考えるのは違うんじゃないかと思えて仕方ない。
もちろん、互いに『その人だけ』を愛することができるならそうすればいいさ。泰や角や彗のように。でも、そうじゃない者にそれを強要することが本当に好ましいのか? 自分一人だけを愛することができない相手だったら、それを受け入れるか、受け入れられないなら諦めるか、そのどちらかだと思うんだけどな。
0
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説


【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。
これが全ての始まりだった。
声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。
なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。
加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。
平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。
果たして、芳乃の運命は如何に?

学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる