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第四世代
彗編 クレバー
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新暦〇〇三七年九月二十九日
そして今日も、彗はフォルトナに餌を与えるために狩りに出る。巣がある木の枝から垂直に三メートルばかりジャンプ、そこで翼を広げて風を掴み、滑空を始める。
上手く風を掴めれば軽く百メートル以上飛ぶこともできるぞ。わずか数百メートルだが高低差がある地域に住んでいるアクシーズの近似種に至っては、それこそ数キロを飛行することも可能なのが確認されていた。元々の素質はそれくらいあるんだ。
そんな彗は、主に小動物や果実を餌にしている。同じアクシーズの中にはそれこそボクサー竜やパパニアンさえ襲って食うのもいるが、彼はそもそもそこまで必要だとは感じていないようだ。大物を狙えばそれだけリスクも高くなるしな。それよりも簡単に確実に捕らえられて、数さえこなせば十分に腹も満たせる形を取っている感じだろうか。
非常に利口で合理的な奴だ。我が息子ながら。
だからこの時も、スッと急降下したと思ったら密林の中にいた鳥を捕えて木に止まっていた。何ともクレバーな。
しかしそれを自分で食べるでもなく再び跳び上がって滑空に移り、巣のある方向へと戻っていく。
そんな彗の姿に気付くと、
「ミャーッ! ミャーッ!」
とフォルトナが声を上げた。その鳴き声がまたネコそっくりでなんか可愛らしい。
羽を持ち、タカを思わせる印象から<アクシーズ>と名付けたが、振る舞いやしぐさはかなりネコっぽくもあるんだよな。足を大きく広げて自分で毛繕いしている姿なんてそれこそネコそのものだったりもする。
まあその辺は、見た目には<ウサギのコスプレをしている人間>でありつつ生態としてはサルそのものなパパニアンもいたりするし、タカだサルだと思ってるのは俺達だけで、アクシーズもパパニアンもここではあくまで<そういう種>というだけだよな。
おそらく最初は例の<不定形生物>が変化したキメラとして生まれて、その中の一部がいろいろと形態を変化させつつ今の形になっていったんだろうと推測してる。
しかも最初のうちは、同じ形態を持った個体がいくつも現れたんじゃなく、ビアンカが<自家受精>でケインやイザベラやキャサリンを生んだように、もしかしたら<自家受精>という形で数を増やしていった可能性はあるかもしれない。その上で、遺伝子的に近いものとの間で子を生し、さらに種として定着していったんだろう。
蛟のようにあまりにも生物として無理のある構造を持っているものは定着できなかったりもしつつもな。
生き物というのは本当に逞しいよ。
そして今日も、彗はフォルトナに餌を与えるために狩りに出る。巣がある木の枝から垂直に三メートルばかりジャンプ、そこで翼を広げて風を掴み、滑空を始める。
上手く風を掴めれば軽く百メートル以上飛ぶこともできるぞ。わずか数百メートルだが高低差がある地域に住んでいるアクシーズの近似種に至っては、それこそ数キロを飛行することも可能なのが確認されていた。元々の素質はそれくらいあるんだ。
そんな彗は、主に小動物や果実を餌にしている。同じアクシーズの中にはそれこそボクサー竜やパパニアンさえ襲って食うのもいるが、彼はそもそもそこまで必要だとは感じていないようだ。大物を狙えばそれだけリスクも高くなるしな。それよりも簡単に確実に捕らえられて、数さえこなせば十分に腹も満たせる形を取っている感じだろうか。
非常に利口で合理的な奴だ。我が息子ながら。
だからこの時も、スッと急降下したと思ったら密林の中にいた鳥を捕えて木に止まっていた。何ともクレバーな。
しかしそれを自分で食べるでもなく再び跳び上がって滑空に移り、巣のある方向へと戻っていく。
そんな彗の姿に気付くと、
「ミャーッ! ミャーッ!」
とフォルトナが声を上げた。その鳴き声がまたネコそっくりでなんか可愛らしい。
羽を持ち、タカを思わせる印象から<アクシーズ>と名付けたが、振る舞いやしぐさはかなりネコっぽくもあるんだよな。足を大きく広げて自分で毛繕いしている姿なんてそれこそネコそのものだったりもする。
まあその辺は、見た目には<ウサギのコスプレをしている人間>でありつつ生態としてはサルそのものなパパニアンもいたりするし、タカだサルだと思ってるのは俺達だけで、アクシーズもパパニアンもここではあくまで<そういう種>というだけだよな。
おそらく最初は例の<不定形生物>が変化したキメラとして生まれて、その中の一部がいろいろと形態を変化させつつ今の形になっていったんだろうと推測してる。
しかも最初のうちは、同じ形態を持った個体がいくつも現れたんじゃなく、ビアンカが<自家受精>でケインやイザベラやキャサリンを生んだように、もしかしたら<自家受精>という形で数を増やしていった可能性はあるかもしれない。その上で、遺伝子的に近いものとの間で子を生し、さらに種として定着していったんだろう。
蛟のようにあまりにも生物として無理のある構造を持っているものは定着できなかったりもしつつもな。
生き物というのは本当に逞しいよ。
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