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第四世代

彗編 人間という種

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新暦〇〇三七年九月二十五日



地球人の親は、<躾>を理由に子供に対して暴力や恫喝や威圧を使うが、なるほど確かに野生の獣もそうしてるみたいに見えるかもしれないが、だがそれは、いずれは命の奪い合いさえする可能性のある<ライバル>であることが大前提になってるというのが俺の実感だな。

そうやって暴力をふるい恫喝し威圧を行ったことについていずれ報復もあって当然という上でやってることだと思うぞ?

野生の獣は、

『育ててやった恩を返せ』

なんて言わないしな。

だが、人間の親は『育てて立った恩を返せ』だの『親は敬うべきだ』だの『目上の人間は敬うべきだ』だの言う。もうその時点で野生の獣とはまったく違っているというのに、<野生の獣のやり方>がそのまま通用すると思ってるんだ。

いやいや、おかしいだろう? なんで野生の獣がしないことをやろうとしてるってのに同時に野生の獣のやり方を踏襲しようとするんだ? それがどれほど無理のあることなのか、なんで考えられない?

人間だからこそのやり方をしようと言うのなら、子供との接し方だって、

<人間だからこそやり方>

が必要になるとなぜ分からない?

人間ってのは、無暗に知能が高い生き物だ。学習能力が高く、知識を蓄積していくことができる。それは同時に、

『やられたことを忘れない』

『恨みを忘れない』

『憤りを忘れない』

ということでもある。ああそうだ、

『やった側はそれを忘れるが、やられた側はいつまでも忘れない』

なんてこともあるのが分かってるじゃないか。子供の頃に親や大人にやられたことをいつまでも覚えていて、機会があればやり返そうとするのも人間という生き物の特徴じゃないのか? 実際、子供に年老いた親の面倒を見させていた頃には、

<子供による年老いた親に対する虐待>

なんてことが頻発していたと聞くぞ?

それは結局、幼い頃に親にやられたことをやり返していたという事例が多かったんじゃないか? と言うか実際に多かったらしいな。

どうしてそういうリスクについて考えることができない?

今までにも何度も言ってきたことだが、そもそも、乳幼児相手に大人が力で負けることがあるか? そんな相手に一方的に暴力をふるい恫喝し威圧するのが果たして人間として好ましい姿だと言えるのか? 

何より、そんな親や大人の姿を見て育つから、

『自分より弱い相手や抵抗できない相手を暴力や恫喝や威圧で従わせよう』

なんてことをできるようになるんだと思わないのか?

野生の獣は、成長した子供からそれをやり返されることがあるという前提の上でやってるってのを、ここで見て学んだよ。

だから俺はそれをしない。

人間だからな。

<人間という種>だからな。

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