上 下
1,901 / 2,627
第四世代

彗編 フォルトナ

しおりを挟む
新暦〇〇三七年九月二十三日



そんなこんなでまさかの形で始まったすいの<子育て>だったが、まだ母乳が必要だった頃の赤ん坊だとどうにもならなかった可能性は高いにせよ、もうすでに普通の餌が食べられるようになっていたことで何とかいけているようだ。

なのでその子の名前は、

<フォルトナ>

と決まった。またしてもあかりが名付け親だ。何やら、コーネリアス号のアーカイブにあった古いアニメに出てくる<幸運の女神>の名らしい。母親を亡くし死を待つのみだったところをすいに救われたわけだから、まあ幸運ではあるんだろう。これが他のアクシーズだったらどうか分からないものの、少なくともすいが保護したのなら俺達としても見て見ぬ振りもできないしな。

だが、そんな俺達の心配をよそに、すいは実に甲斐甲斐しくフォルトナの世話をしてみせた。

餌を運び、食べやすいようにわざわざバラして彼女に与え、舐めて毛繕いをしてやり、うんちはちゃんと巣の外にやれるようにもよおしてきたのを察すると体を支えてやってた。

アクシーズは基本的に巣の外に排泄をするが、この際、子供が巣から転落する事故が割とあるようだ。それだけで死んでしまうことはあまりないものの、中には運悪く死亡する場合もあるらしい。成長すれば転落したところでそのまま地面まで何もせずに落ちたりはしないものの、やはり羽も育っていない幼いうちはな。

これに対してようは、しょうの時もすいの時も、しっかりと支えてやっていた。ちなみにそのためにようが巣にしていた俺のローバーのボディとその下の地面には、便を受け止めるためのシートを敷いていて、エレクシアやセシリアが片付けをしてくれてたよ、

さすがにしょうすいの巣にはそこまではしないとはいえ、しょうすいも自分が母親にしてもらったことを覚えているのか、ちゃんと支えてやるんだ。ただ、しょうりょうやスフィアを育てたから何度も見たが、まさかすいまで同じようにするとは。

その様子が、本当に母親のようで。

雄なのにな。

でもまあ、自分が幼かった頃のことを覚えていられれば、親にしてもらったのを真似るだけで済むのか。

加えてすいはもしかすると自分も子供を育ててみたかったのかもしれない。

<母性>というものは女性や雌にだけ備わっているわけではなく、男性や雄にもある程度は備わっているものらしい。あくまでそれほど強くないだけで。

と言うかそもそも、

『女性だから雌だから必ずしも母性が備わってる発揮される。とは限らない』

のは分かっている。そして、

『男性だから雄だから母性を発揮することはない。とは限らない』

とも言えるわけだ。

俺も積極的に育児には関わるしな。

もっとも俺の場合は、本質的には<興味本位>というのも事実ではありつつ。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...