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第四世代

彗編 種族的な習性

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新暦〇〇三七年八月十五日


まあそんなこんなで、キャサリンが巣立ちを迎えることに対する準備と言うか心構えと言うか覚悟と言うかができたんだが、当のキャサリンは、好き勝手に自分で狩りをして日が暮れたら帰ってくるという毎日を過ごしていた。

そして、自分達が生まれた、と言うか卵から孵った家で休む。孵卵器を置いてた家をキャサリンとイゼベラのための家に改装したんだ。もっとも、部屋の中にあるのは、直径二メートルほどのでかいビーズクッションだけだが。

それを抱くようにして眠るんだ。むしろそれがあるから帰ってくる感じかもしれない。キャサリンもイザベラも、そしてケインも、それが気に入ってるみたいでな。だが当然、草原にはそんなものはない。キャサリンが草原で休んでる時も、岩やたまに生えている気に抱きつくようにして寝てたりするものの、さすがにゆっくりとは休めないんだろう。

こういうところは確かに人間なんだろうな。本当に野生の獣ならあまり気にしなさそうな気もする。

でも、それもいいさ。こうやって傍にいてくれるならビアンカとしても安心だし。

さりとて、昼の間はずっと草原に出て自分で狩りをして過ごしてるんだよな。ドウを伴いつつ、インパラ竜インパラガゼル竜ガゼルを捕まえるのももうお手の物だ。事実上、巣立っているのと大差ない。

だからあくまで寝床が一緒なだけで、別の暮らしをしてるということなんだろう。俺のところのしんえいと同じということか。しんえいも、俺達が用意した小屋を住処としつつも、自分で狩りをして自分で暮らしてるし。

それぞれの在り方でいいと思う。

しかも、しんえいに比べると、キャサリンの方がまだ、<家族>とコミュニケーションを図ってるかもしれない。

今は完全に独り身のしんはともかく、れいつがったえいではあるものの、やっぱりマンティアンとしての習性か、れいや我が子のメイとも一緒に行動することはほとんどない。まあこれは、れいの方が育児中ということもあってえいを避けているというのもあるんだろうけどな。

共食いが習性としてあるマンティアンも、子育て中の雌は、子供を守るためにも雄とは距離を取る傾向にある。めいでさえかくとそれなりに距離を取っていたし。

それを思うと、キャサリンは間違いなくビアンカとも、

「ん……」

って感じで、顔を合わすと挨拶するように声を上げるんだ。と言うか、実際にそれが彼女にとっての挨拶なんだろう。アラニーズ自体も若い種族なので、種族的な習性についてはまだよく分かっていない。なにしろケインやイゼベラともかなり違った振る舞いをしているわけで。

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