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第四世代

彗編 ドウ

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『ドウ。あれ』

とキャサリンが口にして指差した先には、インパラ竜インパラの群れ。その上で、

「うまそ……」

とも口にする。彼女にはもう、インパラ竜インパラが、

<美味そうな獲物>

に見えるんだろう。そして、草に身を隠しつつ接近。それがまた様になっていて、レオンやオオカミ竜オオカミの成体と何ら変わらない印象がある。そう、立派に捕食者プレデターの貫禄があるんだ。

そんな彼女を、ビアンカが見守る。今回もグレイとドーベルマンMPM二機を随伴して。しかもビアンカは<スナイパーライフル>を装備していた。グレイを支えにしてスコープを覗く。万が一の際にはキャサリンを守るために狙撃も辞さないということで。

ビアンカ自身は必ずしも<狙撃手>ではないものの、狙撃を得意とするわけではないものの、必要とあらば狙撃を行える程度には訓練も積んでいたそうだ。もっとも、実戦でそれが役に立ったことはほとんどなかったそうだが。

実際、長距離狙撃も、ごく一部の<異能レベルの狙撃手>によるそれを除き、ロボットが行っていたそうだし。そりゃそうか。完全に気配を殺し、何時間も動くことなく、しかし一瞬のチャンスを見逃さずに確実に狙撃を行うなんてのは、それこそロボットが得意とする分野だろう。しかも、人間と違ってスポッター役も同時にこなすこともできる。そういう機能を与えることもできる。それこそ他のロボットと連携すればさらに精度は高まるわけで。

こうなると並の狙撃手はお払い箱だろうなあ。が、いかなる状況にも対応できるようにしなきゃならないから訓練だけは欠かせないということだ。

まさかビアンカもこんな形でその経験を活かすことになるとは思わなかっただろうが、同時に、母親として我が子を守るためなら自分にできるあらゆることをする覚悟も持っている。

ただ、わざわざこうやってキャサリンからは見えない距離を保ちつつ守ろうとしてるのは、彼女の自立心を妨げたくないという気持ちもあってのことだ。<我が子を案じる親心>と、<我が子の成長を信じたい親心>を高度に両立させている姿とでも言うか。

俺も、ドローンなどを使って離れたところから見守ってたりするから、気持ちは想像できるってもんだな。

なのに、そんなビアンカの気持ちとは裏腹に、キャサリンは実に的確に獲物との距離を詰めていく。その姿については、ドーベルマンMPM十六号機のカメラを通して確認できていた。

そして、わずか十メートルくらいの距離まで近寄ってみせる。二歳でそこまでできるキャサリンもすごいが、十六号機ドウも同じくインパラ竜インパラに気付かれずに近付けてるわけで、地味にすごいな。

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