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第四世代
彗編 何ができるか
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新暦〇〇三七年八月六日
『本音を言わせてもらえれば、いくら何でもまだ早いと思ったりもするんですけどね……』
わずか二歳でもうすでに<巣立ち>する様子を見せているキャサリンについて、ビアンカが困ったようにそう口にするのは、俺としても共感しかなかった。
錬慈はもうすぐ九ヶ月ではあるものの、まだまだ完全に<赤ちゃん>だ。
「アパ!」
「マア!」
と、『パパ』『ママ』っぽく声を上げるようになったとはいえ、この子があと一年ちょっとで一人で生きていくようになるとか、うん、有り得ないな。
成長が早かった光や灯でさえ、二歳で何ができたかって言ったら、満足にしゃべることもできてなかったし。まあ、二人とも、姿は四歳から五歳くらいで、身体能力的には家の壁を駆け上がって屋根に上る程度のことはできてたが、それと『独り立ちできるか?』というのとは別だろう。
野生の獣であれば、なるほどそのくらいの大きさで身体能力的にもその程度で、普通に成体として生きてるのがいるのは事実にせよ、それでも人間として見ればさすがに。
キャサリンも、<地球人そっくりの部分>については十歳から十一歳くらいに見えるくらいには成長した。おそらく、オオカミ竜相手でも一対一なら互角以上だろう。その上でドーベルマンMPM十六号機を従えているとなれば、なるほど今の時点でももう普通に生きていけるかもしれない。
狩りの腕もすでに一人前なのは確かだし。
でも、それでも、なんだ。それでも地球人の感覚としては『早すぎる』というのは偽らざる気持ちなんだよ。
これについて、血は繋がってないが父親として関わってくれている久利生も、生物学の専門家として興味深く見守ってくれているシオとレックスも、
「正直言わせてもらうと不安しかない」
「私もどうかと思ってしまうな」
「私も、あくまで行動生物学的に見れば今の彼女の能力ならすでに自力で生きていけるのは分かるものの、人間としての感情では納得できないのは確かにある」
とのことだった。
一方、灯は、
「そうかなあ。キャサリンだったら余裕で生きてってくれると思うけどなあ。十六号機もいるし。本人が残りたいって言ってんなら追い出す必要もないけどさ」
「うきゃきゃきゃきゃ♡」とはしゃぎながら自分の体を上っては飛び降りて遊ぶ我が子を見ながらそう言った。灯の娘の蒼穹は一歳四ヶ月。外見上は四歳になるかどうか?という感じだからまだまだ子供なものの、年齢で見るんじゃなくて、
『本人に何ができるか?』
で見る感覚が灯にとっては普通なんだ。
『本音を言わせてもらえれば、いくら何でもまだ早いと思ったりもするんですけどね……』
わずか二歳でもうすでに<巣立ち>する様子を見せているキャサリンについて、ビアンカが困ったようにそう口にするのは、俺としても共感しかなかった。
錬慈はもうすぐ九ヶ月ではあるものの、まだまだ完全に<赤ちゃん>だ。
「アパ!」
「マア!」
と、『パパ』『ママ』っぽく声を上げるようになったとはいえ、この子があと一年ちょっとで一人で生きていくようになるとか、うん、有り得ないな。
成長が早かった光や灯でさえ、二歳で何ができたかって言ったら、満足にしゃべることもできてなかったし。まあ、二人とも、姿は四歳から五歳くらいで、身体能力的には家の壁を駆け上がって屋根に上る程度のことはできてたが、それと『独り立ちできるか?』というのとは別だろう。
野生の獣であれば、なるほどそのくらいの大きさで身体能力的にもその程度で、普通に成体として生きてるのがいるのは事実にせよ、それでも人間として見ればさすがに。
キャサリンも、<地球人そっくりの部分>については十歳から十一歳くらいに見えるくらいには成長した。おそらく、オオカミ竜相手でも一対一なら互角以上だろう。その上でドーベルマンMPM十六号機を従えているとなれば、なるほど今の時点でももう普通に生きていけるかもしれない。
狩りの腕もすでに一人前なのは確かだし。
でも、それでも、なんだ。それでも地球人の感覚としては『早すぎる』というのは偽らざる気持ちなんだよ。
これについて、血は繋がってないが父親として関わってくれている久利生も、生物学の専門家として興味深く見守ってくれているシオとレックスも、
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とのことだった。
一方、灯は、
「そうかなあ。キャサリンだったら余裕で生きてってくれると思うけどなあ。十六号機もいるし。本人が残りたいって言ってんなら追い出す必要もないけどさ」
「うきゃきゃきゃきゃ♡」とはしゃぎながら自分の体を上っては飛び降りて遊ぶ我が子を見ながらそう言った。灯の娘の蒼穹は一歳四ヶ月。外見上は四歳になるかどうか?という感じだからまだまだ子供なものの、年齢で見るんじゃなくて、
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で見る感覚が灯にとっては普通なんだ。
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