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第四世代

彗編 人間としての生き方

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いずれにせよ、ここにはまだ、地球人社会で問題とされてきた諸々については定着していない。善だ悪だとカテゴライズして決め付けて、自分に都合の悪い相手を<悪>認定するようなのはないんだ。

夷嶽いがく>や<牙斬がざん>や<ヒト蛇ラミア>も、<外敵>ではあっても決して<悪>じゃない。分かりやすい<悪役>はいない。

本質的にはどこまでも<生存競争>。それは善でも悪でもない。

そして、すいと睦み合いたいがために清良せいらがファルケを追い出したんだとしても、それを責める理由にはならない。彼女に悪意はないんだ。野生に生きる者として当たり前のことをしてるに過ぎないわけで。

その一方で、<人間>として生きる者には、どうしても<人間としての生き方>を学んでもらわなきゃいけない。まどかひなた萌花ほのかやメイや錬慈れんじには、な。

ああでも、メイについては、マンティアンとしての生き方を選ぶ可能性もまだあるのか。彼が<マンティアンとしての生き方>を選ぶんだとしても、俺達が<人間としての生き方>を押し付けるわけにもいかないよな。

見た目は完全に地球人のそれでも、見た目は完全に地球人のそれだったじゅんがパパニアンとして普通に生きていたという前例もある以上は、野生のマンティアンとしての生き方を選ぶ可能性だってちゃんと頭に入れておかなきゃ。

彼の選択は尊重したい。したいが、今の時点ではとりたてて密林の中で生きようとしてるような様子は見られないかな。

叔父であるせいと違って。さらには、<祖母の弟であるじょうの息子であるりく>とも違って。

せいりくは見た目からしてマンティアンだからマンティアンとして生きるのは当然だと思うものの、こちらについては、敢えて俺達の集落内で生きてるえいもいるわけで、これまた常に決まりきった生き方を選ぶわけでもないのもまた事実。

個体によって違うんだよ。やっぱり。

人間として生きるならその辺もわきまえてもらわないといけないな。

<個体差><個人差>といったものが現に存在するということをきちんと理解してくれないと、無駄な軋轢を生むだろうさ。

そしてその軋轢は、不幸を生む。

他者が『自分ではない』ことを理解できない地球人が何をやらかしてきたか、俺だって知っている。他者が自分に都合よく動いてくれることを一方的に要求して、その通りにならなけりゃキレるんだ。それは時には暴力が伴ったりもする。

子供を虐待するような親も、結局はそうだろう? 子供が自分の思い通りにならないとキレたりするんだろう?

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