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第四世代

彗編 養親

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『生涯で一人も子供を持たなかった』

という話は、実は男性の方も無関係な話じゃない。いわゆる<性別適合手術>を受けることで後天的に女性になった人でも、再生医療の応用できちんと機能する子宮を獲得できるようになったおかげで出産した<元男性>だってもはや珍しくなかったりもする。

加えて、<養親>として子供を持つこともできたんだよ。未婚男性であっても、メイトギアのサポートがあれば養親にはなれる。そういう形で子供を育てた男性も珍しくはない。

まあ、こっちの場合は出生率には影響ないが、

<親に育ててもらえない子供>

に親ができるという意味じゃ、ちゃんとした制度ではある。しかも、虐待とかそういう心配も、メイトギアを配することで回避できるしな。しっかりと育成記録を取ってくれるし、万が一の際は緊急信号を発信した上で身を挺して子供を庇ってくれる。実際、養親からの虐待をそうやって阻止したという事例もあるそうだ。

<メイトギア>と呼称されるロボットが実用化された最初期の頃にはまだまだその辺が十分に整備されていなくてあれこれ問題もあったらしいのもありつつ、少なくとも、コーネリアス号が現役だった三十七世紀頃にはそれが確立してたとのこと。

犯罪発生率が低下したのも、そういうのが影響してるんだろうな。

結局、親との関係が良好な人間は、犯罪に走らなきゃいけない理由が確実に減るんだよ。

『親との関係が良好な人間は犯罪に走らない』

とは言わないものの、明らかに減ることは数字上でも確認されている。これは事実だ。

まあ、考えてみたらそうだろ。親との関係が良好で、親に迷惑を掛けたくないと考えたら、迷惑を掛けたいとは思わない親だったら、そりゃ自制もしやすくなるってもんだ。

俺が自制できたのも、結局はそれだったしな。両親は亡くなってたが、でも、俺が何か事件を起こせばあの人達は悲しむだろうなと思うと、な。

悲しませても惜しくない。苦しませても惜しくない。それどころか積極的に苦しめてやりたいと思える親だったら、ブレーキも効きにくいだろうなあ。

とは思う。

なんて、また余談が長くなったが、ファルケやスフィアには関係ない話だった。ここは、<親による子殺し>や<子による親殺し>も当たり前の世界だ。ひかりだってまどかだって、地球人そのものの姿で生まれたから親に育ててもらえなくて死ぬところだったし、れいに至ってはそれこそ生んだ母親に殺されるところを救出した形だったからな。

その一方で、カマキリ人間マンティアンヒト蜘蛛アラクネの場合とかだと、まさしく親を殺してその縄張りを奪うなんてこともある。

これがここの<普通>だ。

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