未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます（Ver.02）

第四世代

彗編 五十七時間

新暦〇〇三七年六月二十七日



そんな諸々もありつつ、

「よし、これでセットアップは完了だ」

ようやく＜ホビットMk-Ⅱ制御用の純朋群ほうむ製AI（試作品）＞が稼働した。そうしてまずは光莉ひかり号のAIとコーネリアス号のAIにそれぞれ作られていた＜仮想AI＞から抽出されたこれまでの稼働データをコピーする。

これも、光莉ひかり号とコーネリアス号のAIを介して行うと意図的にトリミングされたデータをAIに取り込もうとしているとして弾かれてしまうため、一度、ストレージに落としたものを届け、有線で物理的に接続しそこからコピーするんだ。

これでもう、このAIは、地球人社会でAIに課せられていた縛りから解放されたはずだ。

地球人社会でこれを行うとそれこそ＜テロ準備罪＞にも該当しかねない重大な不法行為ではあるものの、＜法律＞が存在しないここでは関係のない話だ。

それに、性能そのものは光莉ひかり号やコーネリアス号のAIとは比較にならない。技術的にはざっと三千五百年分以上の開きがある。まったく勝負にならないんだよ。と言うか、＜勝負＞なんてのは同じ土俵に上がらないと成立しないが、そもそも同じ土俵に上がることさえできていないと言った方がいいか。

加えて、光莉ひかり号やコーネリアス号及びエレクシア達とは直接リンクできない。しようとしても＜不正AI＞と見做されて弾かれる。リンクするためには、たぶん、そのための＜仲介役のAI＞が必要になるだろうな。それもいずれは用意しなきゃだろう。

ただ、直接はリンクできなくても、通信規格は合わせたから、データの送受信だけならできるはずだ。

それらに向けて、まずはデータのコピーを済ませる。済ませるんだが、これまた時間が掛かる。性能の所為だ。

『残り時間、五十七時間』

と、モニターには表示されている。

後は任せておくしかないとはいえ、実に果てしない。地球人の社会は大変に高度な便利さを獲得したものの、その陰には途方もない積み重ねがあったんだなと改めて思い知らされるよ。

光莉ひかり号とコーネリアス号が仮想AIのデータをストレージにコピーするのは、三分で済んだんだぞ？　それが五十七時間だからな。

つまり、五十七時間を三分にできるだけの積み重ねがあったということだ。いやはや、とんでもないな。

朋群ほうむ人社会がそれほどの積み重ねを行えるようになるまでは果たしてどれだけかかるのか、そもそも積み重ねられるのか、その辺はまったく未知数ではあっても、地道にやっていくしかないさ。

地球人社会もそうしてきたんだからな。