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第四世代

彗編 プロローグ

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新暦〇〇三七年五月十八日



ルイーゼが顕現して五ヶ月以上が経ち、アリニドラニ村で斗真とうまとまさかの出逢いをし、互いに惹かれ合い、今では一緒に暮らしている。

しかもアリニドラニ村の地下には豊富な資源が眠っている可能性が高く、ルイーゼにはそれを調査するという大義名分もあり、アリニドラニ村にとどまる理由ができたのも、ある意味では二人がこうなるのは必然だったのかもしれない。

コーネリアス号が遭難して二千年以上経ってこんな出逢いがあるとか、人生ってやつはどこまでも皮肉だよな。

これは俺も同じだ。妹の光莉ひかりを難病で喪い、治療費のために作ったヤバい借金を返すために惑星プラネットハンターなんてヤクザな仕事を始めて、その借金も、正当な金利で計算し直せばもうとっくに完済できてたことを自覚して何もかもどうでもよくなって、身投げのつもりで飛び込んだ夢色星団内のこの惑星に不時着して帰れなくなって、開き直ってここで生きていく覚悟をしたら、今じゃもう、数えきれないほどの子孫を抱える<ご先祖様>だもんな。

いや、マジで、俺の孫や曾孫の中には所在が確認できていないのも何人もいて、そこから先はどうなってるのか分からないんだよ。もう。

それでいて、俺が作った(作ってもらった)集落に残って、『人間として』もしくは『人間に準じた存在として』暮らしてるのもいて、それだけでも大家族になっていた。

そして、俺の<伴侶>だった、ひそかじんふくようの最後を看取り、さらにじんの娘であり俺にとっても実の娘であるめいも看取って、俺自身の老化抑制処置の効果も残り三十年ほどになり、いよいよ人生の終盤を迎えつつ、俺の勝手でこの世界に送り出してしまった子供達の生涯も見届ける段階に来ていた。

俺のこの手記も、結構なボリュームになったと思う。正直、エンターテイメント性という観点で見ればまったく不出来なそれかもしれないが、

<俺という人間の半生を綴った記録>

として見れば、まあ、それなりの資料にはなるんじゃないかな。だからこそ、子孫達に伝えたいことを、心掛けてほしいことを、<人間として生きる上での心掛け>を、記しておきたいと思う。

説教臭くて読めたもんじゃないかもしれないけどな。その点は、後世の誰かがまとめて読みやすくしてくれたら嬉しいかもしれない。

俺は<親>だ。自分がこの世に送り出した子供達とそれに連なる者達に対しての責任がある。人間として生きるにおいて、自分が幸せになるために、誰かと一緒に幸せになるために、知っておいてほしいことがあるんだ。

だから俺は、これを記す。

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