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第四世代

閑話休題 ドーベルマンMPM十九号機

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ドーベルマンMPM十九号機は、夷嶽いがく戦、牙斬がざん戦双方に参加しつつも無事に生き延びた個体である。

現在は、ビクキアテグ村の周囲で外敵を寄せ付けないようにするための哨戒任務に当たっていた。

そして度々、キャサリンの脱走の際には、ドーベルマンMPM十六号機と共に彼女を守るために対応もした。

ただ、不思議なことにキャサリンはこのドーベルマンMPM十九号機のことが嫌いらしい。メンテナンスの度にバージョンアップと同時に仕様も同期されるため、外見上は十六号機と具体的な違いはほとんどない。他の個体と同様に割り振られたナンバーが数ヶ所、小さくペイントされているだけである。

なのにキャサリンは、十六号機は傍に置きつつ、十九号機に対しては見掛ける度に攻撃を仕掛けてきた。人間に対しては攻撃を加えないキャサリンでありつつ、ロボットは別のようだ。

また、まだ上手く話せないのでその理由は不明だが、もしかすると十六号機と同じ姿をしてるのが逆に気に入らないのかもしれない。ただ、村の中でもドーベルマンMPMは何機も稼働しているもののそちらについては特に気にしていないようなのでやはりそういう点ではよく分からないとも言える。

まあ、特に幼い頃の好き嫌いなど、えてして本人でさえ物心ついた頃には忘れていたりすることも多いため、本当のところは判明しない可能性が高いだろう。なのでさほど重要な話でもない。

ゆえに、十九号機も、襲い掛かってくるキャサリンを相手にあくまで防戦という形で対処する。

現在二歳のキャサリンの、<地球人そっくりな部分>の見た目は十歳程度。アラニーズとしての体長は一メートル五十センチを大きく超え、ドーベルマンMPMをはるかに上回っていた。強さの印象としてはすでに闘犬としてのマスチフ辺りと同格だろうと思われる。

そんな彼女に襲われても、十九号機は慌てない。ロボットなので当然と言われればその通りなのだが、これもまた、<戦闘データ>として蓄積されていくものでもあるからだ。

ドーベルマンMPM自体、これまで未来みらい素戔嗚すさのおとの力比べなども含めて数多くの経験を積み重ね、データを収集。それを基にしたバージョンアップも図られ、建造された当初とは比べ物にならないほどに強くなっている。正直な話、建造されたばかりの頃であれば、今のキャサリンの相手はやや厳しいものがあったかもしれない。

しかし現在では、<触角(地球人そっくりに見える部分の手足)>による連続攻撃も難なく捌いてみせる。その上で、服を着るのを嫌がり、全裸にしか見えない彼女を傷付けないように、的確な手加減もしてみせる。

キャサリンにしてみるとその辺りも癪に障るようだ。

なお、この時、十六号機はあくまでそんな彼女の様子を見守っているだけで、加勢はしない。

こうしているうちにキャサリンの母親のビアンカが迎えに来て、連れ戻されるのだった。

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