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第四世代

閑話休題 ドーベルマンMPM十六号機

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ドーベルマンMPM十六号機は、かつて夷嶽いがくの一件でも作戦に従事し、牙斬がざんの一件の際にもビアンカと共に対応に当たった個体である。

厳密には夷嶽いがくの攻撃で破壊されたドーベルマンMPMの無事な部分を寄せ集めた<四個一機体>でもあるが。その中で最も若い番号を改めて割り振られた個体だった。

とはいえ、ドーベルマンMPMには自我も個性もないので、番号はあくまで便宜上のものでしかない。

ないのだが、キャサリンはなぜかこの十六号機がお気に入りらしく、よく一緒にいるようだ。それもあって、<脱走癖>のある彼女のお守りとしてつけられていた。

そしてその日も、キャサリンは勝手に村を抜け出したのだった。

もっとも、それまでの彼女の脱走癖は、実は、

『構ってほしい』

という気持ちの裏返しだったようだが。特に母親であるビアンカが探しに来てくれると、嬉しそうに<鬼ごっこ>をしていた。まあ、大人であり軍人としてのスキルも持つビアンカ相手に逃げ切れるわけもなく、毎回、手加減してもらって一通り遊んで満足して捉えられ、村に連れ戻されるということを繰り返していただけでありつつも。

そんな彼女の傍に常に付き添っていたのが十六号機だった。

なので、それほど心配もなかった。ただの遊びの一環だった。そんな遊びを繰り返すうちに、キャサリンには、<世界>に対する関心が芽生えていったようだ。

どこまでも果てしなく広がる草原。はるか遠くに見える地平線。その先に何があるのか、彼女は興味を持ってしまったらしい。

だから村から抜け出したのだ。抜け出して、いつもより遠くまでやってきた。それまでは母親に追いかけてきてもらうために敢えて村が見える位置までしか行かなかったのに、今回は完全に村が見えなくなるまで離れた。距離にして約二キロ。

それをビアンカが追う。追うが、十六号機がキャサリンと共にいることは分かっているので、それほど焦ってはいなかった。十六号機のカメラもしっかりとキャサリンの姿を捉えている。

もし見失っても、ビクキアテグ村の住人には全員、チップが付けられていて、必要とあらば位置を検索することもできた。特にキャサリンのようにして勝手に遊びに出てしまう子のためだったが、安全保障上有効だということで全員が付けることになったものだった。

『こんな遠くまで……』

ビアンカはキャサリンを追いながらそう思い、同時に、娘の成長を実感した。単に構ってほしくて脱走したわけじゃないのを察していた。

そんな母親に代わって、十六号機はキャサリンを見守っていたのだった。

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