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第四世代
閑話休題 キャサリンの野望
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キャサリンはアラニーズである。
ケインやイザベラと同じくアラニーズであるビアンカが<自家受精>によって授かった子供だった。
そしてイザベラによく似て凶暴さと獰猛さを備えた、実に逞しい子供だった。
なお、イザベラは未来のことが気になりだしたらしく少し可愛らしい様子も見せ始めていたが、対してキャサリンは、ぐいぐいと村の外に出て行って、イタチ竜などを積極的に捕食し始めていた、はっきり言ってもうすでに一人でも生きていけそうな様子ではある。
実際、ヒト蜘蛛は母親の体内から出てくるとそのまま野生の獣として一人で生きていく。成体のヒト蜘蛛に比べればさすがに非力でも、野犬程度には強く、しかも成体のヒト蜘蛛に比べると体が小さいがゆえに成体が乗ったら折れてしまうようなより細い木の枝を伝って移動できるため、住み分けができるという利点もある。
だからとても強かに生きていた。
キャサリンはそんな野生のヒト蜘蛛の子供に近いのかもしれない。
それでいて、しっかりと人間としての知能や理性は獲得しており、きちんと<仲間>というものを理解していた。ゆえに仲間に襲い掛かるようなことはない。この点においてヒト蜘蛛は、同じヒト蜘蛛であろうとも襲って食うことが確認されており、明らかに習性が異なっているのも事実だと言えるのだろう。
少なくとも普段は仲間に襲い掛かったりしないくらいの分別はつけてもらわないと同じ<人間>として生活を共にすることは叶わないので、そうでなくては困るとも言えるが。
しかし同時に、彼女は、仲間と共に暮らしているよりは一人気ままに狩りをして生きていたいという野望を抱いているようにも思われた。頻繁に村を抜け出して自ら狩りをしているのはまさにそれを物語っているのかもしれない。
さりとて、人間としての実年齢はまだ二歳であり、母親のビアンカとしてもさすがに早いと感じていた。だから、<ドーベルマンMPM>と呼ばれるロボットを彼女専属の<護衛>として付けている。
いるものの、彼女が成長すると共に、単に子供っぽい衝動でそれをしているのではなく、一人の人間として明確な意思の下で自らの生き方を決めようとしているのであれば、いずれは認めるしかないとも思っている。
ただその場合にも、<バディ>としてロボットを付けなければと考えていた。それが親としての最大限の譲歩だっただろう。
そんな母親の気持ちを知ってか知らずか、今日もキャサリンは、お供のドーベルマンMPMと共に草原を駆け抜け、狩りをし、それによって自らの命を繋ぐ。
そして獲物を食らった後、血塗れの口の周りを舌で舐めながら、
「……」
地平線まで見渡せる草原に視線を向けていたのだった。
ケインやイザベラと同じくアラニーズであるビアンカが<自家受精>によって授かった子供だった。
そしてイザベラによく似て凶暴さと獰猛さを備えた、実に逞しい子供だった。
なお、イザベラは未来のことが気になりだしたらしく少し可愛らしい様子も見せ始めていたが、対してキャサリンは、ぐいぐいと村の外に出て行って、イタチ竜などを積極的に捕食し始めていた、はっきり言ってもうすでに一人でも生きていけそうな様子ではある。
実際、ヒト蜘蛛は母親の体内から出てくるとそのまま野生の獣として一人で生きていく。成体のヒト蜘蛛に比べればさすがに非力でも、野犬程度には強く、しかも成体のヒト蜘蛛に比べると体が小さいがゆえに成体が乗ったら折れてしまうようなより細い木の枝を伝って移動できるため、住み分けができるという利点もある。
だからとても強かに生きていた。
キャサリンはそんな野生のヒト蜘蛛の子供に近いのかもしれない。
それでいて、しっかりと人間としての知能や理性は獲得しており、きちんと<仲間>というものを理解していた。ゆえに仲間に襲い掛かるようなことはない。この点においてヒト蜘蛛は、同じヒト蜘蛛であろうとも襲って食うことが確認されており、明らかに習性が異なっているのも事実だと言えるのだろう。
少なくとも普段は仲間に襲い掛かったりしないくらいの分別はつけてもらわないと同じ<人間>として生活を共にすることは叶わないので、そうでなくては困るとも言えるが。
しかし同時に、彼女は、仲間と共に暮らしているよりは一人気ままに狩りをして生きていたいという野望を抱いているようにも思われた。頻繁に村を抜け出して自ら狩りをしているのはまさにそれを物語っているのかもしれない。
さりとて、人間としての実年齢はまだ二歳であり、母親のビアンカとしてもさすがに早いと感じていた。だから、<ドーベルマンMPM>と呼ばれるロボットを彼女専属の<護衛>として付けている。
いるものの、彼女が成長すると共に、単に子供っぽい衝動でそれをしているのではなく、一人の人間として明確な意思の下で自らの生き方を決めようとしているのであれば、いずれは認めるしかないとも思っている。
ただその場合にも、<バディ>としてロボットを付けなければと考えていた。それが親としての最大限の譲歩だっただろう。
そんな母親の気持ちを知ってか知らずか、今日もキャサリンは、お供のドーベルマンMPMと共に草原を駆け抜け、狩りをし、それによって自らの命を繋ぐ。
そして獲物を食らった後、血塗れの口の周りを舌で舐めながら、
「……」
地平線まで見渡せる草原に視線を向けていたのだった。
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