未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます（Ver.02）

第四世代

閑話休題 ケインの憂鬱

ビクキアテグ村のケインは、アラニーズである。

アラニーズは、ヒト蜘蛛アラクネと呼ばれる種と極めて近い存在でありながら、その印象はまったく異なっていた。

＜ヒト蜘蛛アラクネ＞は、人間としての知性や理性を備えておらず、むしろ昆虫に近いメンタリティをしているのが分かる。攻撃性はスズメバチを連想させる凶暴さで、基本的にコミュニケーションを取ることは不可能だと考える方がいいだろう。迂闊に近寄ればそれは＜死＞を意味する。

それに対してアラニーズは、人間としての知性や理性を備えている。ケインの妹達であるイザベラとキャサリンは、人間として考えるとかなり凶暴な部類に入るのは間違いないにしても、実年齢二歳にしてある程度は言葉を解し、人間相手には攻撃性を向けないようにする程度の理性も備えていた。

しかしケインは、そんな妹達よりももっとおとなしく、むしろ臆病とさえ言えた。

いや、動物は、たとえ＜猛獣＞と呼ばれるものであっても本質的には臆病であり、危険を察知するとまずは逃げることを選ぶ。不意に鉢合わせたりして逃げるのが難しいような状況に遭遇すると、身を守るために全力で戦おうとしたりもするが、それも結局は臆病さゆえのものであるのが分かっている。臆病だからこそ手加減などできないのだ。

ただ、ケインの場合は、とにかく逃げの一手という感じだった。土竜モグラと呼ばれる、地下に穴を掘って虫や植物の根などを食べている小動物さえ恐れて逃げ出すのだ。ましてや、イタチ竜イタチと呼ばれる、体こそ家猫程度の大きさしかないものの極めて凶暴で獰猛な獣になど遭遇しようものならそれこそ母親であるビアンカの背の上に逃げ帰って体を丸めてしまう。

それもあってか、普段からビアンカの背に乗っていることが多い。

とは言え、妹のイザベラもキャサリンも、そんな兄をバカにしたりはしない。しないが、構ってもくれないのも事実である。

まあ、それについてはそもそもケインの方から構ってもらおうとはしないが。

なお、兄妹と言っても、ケインもイザベラもキャサリンも、同じ日に卵から孵っている。あくまで卵から孵った順番で兄妹と言っているだけで、どちらが上という明確な根拠はない。

だからか、当人達もその辺りは関心もなさそうだ。実年齢は二歳になったところだから今の時点ではそれも当然かもしれないが。

それよりもケインはいろいろなものが怖くて仕方ないようで、そのことが彼にとっては重大事なのだと思われる。

その一方で、実の母親のビアンカも、義理の父親である久利生くりうも、義理の母親である灯あかりも、義理の兄である未来みらいも、地球人そっくりの姿で生まれた血縁上の妹に当たる黎明れいあも、義理の姉であるルコアも、彼のことを嗤ったりはしないから、好きらしい。