1,840 / 2,566
第四世代
光編 毛のないパパニアンの子供
しおりを挟む
この時、萌花は、きれいな鳥を見掛けてそれを追いかけてしまったらしい。それ自体はここでは珍しいものじゃなかったが、たまたま、彼女の目の前にとまってそれから飛び立ったのを反射的に、という感じだったようだ。その様子がカメラに捉えられていた。
地球人の子供だったらすぐに鳥を見失ってしまったであろうところが、パパニアンとしての能力を備えた萌花にはそれなりに追いすがることができてしまったというのも皮肉な話である。
だがそんな彼女を見付けてしまった者がいた。
アクシーズだった。翔の縄張り深くまで入り込んだ若いアクシーズが、萌花を見付けてしまったんだ。
<毛のないパパニアンの子供>
のようにも見える彼女を。
体そのものは決して大きくないアクシーズではあるものの、その足に備えた爪は極めて強力な武器であり、パパニアンの成体ですら、目や耳の穴に爪を突き立てて脳にまで届かせ、殺してしまうことがある。そうして動かなくなったところをゆっくりと食べるのだ。
ましてや子供のパパニアンなど、それこそ絶好の獲物以外の何物でもない。
だから萌花を狙うのは当然だった。滑空し、音もなく近付き、狙いを定めて羽をたたみ急降下。だがその時、獲物との間に何かが飛び込んでくる。
咄嗟にそれを足で掴み、羽を広げて急ブレーキ。上手く風を掴むことができたらしく、そのまま上昇に転じることができたようだ。そのアクシーズの足には、機能停止したドローン。
そう。萌花に付けられたチップの信号を頼りに駆け付けたドローンが間に入って庇ったんだ。
しかしアクシーズも、掴んだ感触で『これは食べられない』と察したか、上空でドローンを放り出し、改めて萌花に狙いをつけ、急降下。
だが、ドローンに邪魔をされたのが致命的だったな。
萌花に向けて足を伸ばしたアクシーズの耳に、
「パンッ!」
という破裂音。それとほぼ同時に、
「ギャッッ!?」
と悲鳴を上げ、身をよじってバランスを崩し、墜落する。かろうじて途中で木の枝に掴まって地上まで落下することは避けられたものの、
「ギギ……!」
苦悶の表情を浮かべている。
そんなアクシーズの視線の先にいたのは、般若の表情をした女性。
光だった。光が萌花との間に立ちふさがったんだ。
「ママっ!」
声を上げた萌花に背を向けたまま、
「大丈夫? 萌花」
声を掛けるものの、いつもはとても穏やかな母親の険しい気配に、
「ごめんなさい……」
自分が勝手に出てきてしまったことでこうなったのだと察した萌花が、体をすくめて小さくなっていたのだった。
地球人の子供だったらすぐに鳥を見失ってしまったであろうところが、パパニアンとしての能力を備えた萌花にはそれなりに追いすがることができてしまったというのも皮肉な話である。
だがそんな彼女を見付けてしまった者がいた。
アクシーズだった。翔の縄張り深くまで入り込んだ若いアクシーズが、萌花を見付けてしまったんだ。
<毛のないパパニアンの子供>
のようにも見える彼女を。
体そのものは決して大きくないアクシーズではあるものの、その足に備えた爪は極めて強力な武器であり、パパニアンの成体ですら、目や耳の穴に爪を突き立てて脳にまで届かせ、殺してしまうことがある。そうして動かなくなったところをゆっくりと食べるのだ。
ましてや子供のパパニアンなど、それこそ絶好の獲物以外の何物でもない。
だから萌花を狙うのは当然だった。滑空し、音もなく近付き、狙いを定めて羽をたたみ急降下。だがその時、獲物との間に何かが飛び込んでくる。
咄嗟にそれを足で掴み、羽を広げて急ブレーキ。上手く風を掴むことができたらしく、そのまま上昇に転じることができたようだ。そのアクシーズの足には、機能停止したドローン。
そう。萌花に付けられたチップの信号を頼りに駆け付けたドローンが間に入って庇ったんだ。
しかしアクシーズも、掴んだ感触で『これは食べられない』と察したか、上空でドローンを放り出し、改めて萌花に狙いをつけ、急降下。
だが、ドローンに邪魔をされたのが致命的だったな。
萌花に向けて足を伸ばしたアクシーズの耳に、
「パンッ!」
という破裂音。それとほぼ同時に、
「ギャッッ!?」
と悲鳴を上げ、身をよじってバランスを崩し、墜落する。かろうじて途中で木の枝に掴まって地上まで落下することは避けられたものの、
「ギギ……!」
苦悶の表情を浮かべている。
そんなアクシーズの視線の先にいたのは、般若の表情をした女性。
光だった。光が萌花との間に立ちふさがったんだ。
「ママっ!」
声を上げた萌花に背を向けたまま、
「大丈夫? 萌花」
声を掛けるものの、いつもはとても穏やかな母親の険しい気配に、
「ごめんなさい……」
自分が勝手に出てきてしまったことでこうなったのだと察した萌花が、体をすくめて小さくなっていたのだった。
0
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる