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第四世代
光編 その人の一面
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新暦〇〇三七年四月二日
初めて見た時のルイーゼの印象は、
<最低限のコミュニケーション能力はあるもののとにかく不愛想で人間性を欠く人物>
だったんだが、そういうのも結局、
<その人の一面>
でしかないんだというのを思い知らされたよ。今、斗真と一緒にいる彼女は、ごく普通の、
<恋する女性>
にしか見えないんだ。まあ、その恋心については、いささか『変わってる』と言えるのかもしれないが。取り敢えず、見ている限りではどうにもまず<斗真が鍛える鋼>が先にあって、『それを生み出すのが彼だから』という形で想いが形成されている気がする。
だからこそ地球人社会じゃなかなか出逢えないタイプだったのは事実だろう。当のルイーゼにしても、まさかこんな形でときめきを覚えられる出逢いがあるなんて思ってもいなかったろうし。
それでも、今のところは別に何か問題があるわけでもないしな。
斗真がもし鍛冶の仕事ができなくなったらひょっとすると気持ちが覚めてしまうかもしれないにしても、これ自体、人間関係においては別に珍しいことでもないわけで。
このまま二人の関係が進展するならそれでよし。ダメならダメで、その時はまあその時だ。当面は見守るしかないにせよ、現状、微笑ましくもある。
「あの不定形生物内のシミュレーション世界では、ルイーゼはただただ仕事に打ち込んでいるだけだった。彼女のおかげで様々有用な鉱物の発見に至ったのも事実ではありつつ、私達ではその功績に報いることが十分にできていなかったと感じていた。けれど今の彼女はとても幸せそうだ。この出逢いに感謝したい」
レックスは、ルイーゼの様子を見ながらしみじみと語った。そしてそれは、シモーヌやシオやビアンカや久利生の思いでもあるそうだ。
俺はあくまでここに来てからの彼女しか知らないが、かつての彼女を知る者が『幸せそう』だというのなら何よりだ。<誰もが必ず幸せになれる世界>なんてものを実現できるとまでは思い上がれないものの、なるべく皆が幸せでいてくれることは、俺にとってもすごくありがたいと思う。
『不幸な者がいる』
というのは、それ自体がリスクだしな。<不幸な者>は、自らの不幸を贖おうとして無茶をすることがあるのも事実。実際、地球人社会でもそれによって数多くの悲劇が生み出されてきたわけで。
光にもそれを分かってもらいたいと思うし、概ね分かってくれてると今回も感じた。そしてこれからも、俺の命がある限りは、彼女が<最大の幸福>を追求することを忘れないでいてくれるかどうかを見守りたいと思う。
そしてもし、彼女が<暴君>になるようなら、その時は俺が止めなきゃならないだろうな。
初めて見た時のルイーゼの印象は、
<最低限のコミュニケーション能力はあるもののとにかく不愛想で人間性を欠く人物>
だったんだが、そういうのも結局、
<その人の一面>
でしかないんだというのを思い知らされたよ。今、斗真と一緒にいる彼女は、ごく普通の、
<恋する女性>
にしか見えないんだ。まあ、その恋心については、いささか『変わってる』と言えるのかもしれないが。取り敢えず、見ている限りではどうにもまず<斗真が鍛える鋼>が先にあって、『それを生み出すのが彼だから』という形で想いが形成されている気がする。
だからこそ地球人社会じゃなかなか出逢えないタイプだったのは事実だろう。当のルイーゼにしても、まさかこんな形でときめきを覚えられる出逢いがあるなんて思ってもいなかったろうし。
それでも、今のところは別に何か問題があるわけでもないしな。
斗真がもし鍛冶の仕事ができなくなったらひょっとすると気持ちが覚めてしまうかもしれないにしても、これ自体、人間関係においては別に珍しいことでもないわけで。
このまま二人の関係が進展するならそれでよし。ダメならダメで、その時はまあその時だ。当面は見守るしかないにせよ、現状、微笑ましくもある。
「あの不定形生物内のシミュレーション世界では、ルイーゼはただただ仕事に打ち込んでいるだけだった。彼女のおかげで様々有用な鉱物の発見に至ったのも事実ではありつつ、私達ではその功績に報いることが十分にできていなかったと感じていた。けれど今の彼女はとても幸せそうだ。この出逢いに感謝したい」
レックスは、ルイーゼの様子を見ながらしみじみと語った。そしてそれは、シモーヌやシオやビアンカや久利生の思いでもあるそうだ。
俺はあくまでここに来てからの彼女しか知らないが、かつての彼女を知る者が『幸せそう』だというのなら何よりだ。<誰もが必ず幸せになれる世界>なんてものを実現できるとまでは思い上がれないものの、なるべく皆が幸せでいてくれることは、俺にとってもすごくありがたいと思う。
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というのは、それ自体がリスクだしな。<不幸な者>は、自らの不幸を贖おうとして無茶をすることがあるのも事実。実際、地球人社会でもそれによって数多くの悲劇が生み出されてきたわけで。
光にもそれを分かってもらいたいと思うし、概ね分かってくれてると今回も感じた。そしてこれからも、俺の命がある限りは、彼女が<最大の幸福>を追求することを忘れないでいてくれるかどうかを見守りたいと思う。
そしてもし、彼女が<暴君>になるようなら、その時は俺が止めなきゃならないだろうな。
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