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第四世代

光編 一役買ってる

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新暦〇〇三七年三月二十九日


台地の麓に移送されたヒト蛇ラミアは、やはりルイーゼのところに向かおうとしてか、何度も崖を登ろうとした。

しかしその巨体が災いしてまったく登れそうな気配がない。この、高さ一千メートルにも及ぶほぼ垂直の断崖絶壁は、これ以上ないくらいに強力な<防壁>になってるのを改めて実感する。なのに諦め悪く挑戦するんだ。そんな姿が可哀想にも見えてしまうものの、だからと言って台地の上に戻すわけにもいかない。

この辺り、変に『優しい』人間だったらヒト蛇ラミアに同情してしまったりするのかもしれないが、ひかりには全くそういう気配もなかった。むしろ俺やシモーヌの方が、

「なんか可哀想だな……」

「そうだね……」

なんてやり取りをしてしまったりもする。

だが、ヒト蛇ラミア自身も、いい加減に『登れない』ことが理解できたのか、昨日辺りから崖に近付こうとしなくなった。

そして、鵺竜こうりゅう相手でもまったく怯むことなく戦い、全長二十メートルを大きく超えたその体で絞め殺し、逆に食ってしまったりもする。鵺竜こうりゅうの牙も爪も、ヒト蛇ラミアの体を覆う鱗には文字通り歯が立たず、打撃しかダメージを与えられそうにないんだが、それすら<対怪物用打撃銃>の直撃にも耐えるような守りの前には致命傷にならないようだ。

実に逞しい。

ただ同時に、サーペンティアンは、かなり生物として無理のあった構造が改善されていて安定して存在していられるというのに、ヒト蛇ラミアについては、みずちに比べるとマシにはなっているようなんだが、無謀なまでの巨大化の弊害もあって、やはりあまり長生きはできないと推測されていた。

だからもし、ビアンカのように自家受精で妊娠して子供ができたとしても、繁殖は難しいともみられていた。まったく、夷嶽いがく牙斬がざんは普通につがって子も成しているというのに、ヒト蛇ラミアだけはこうなのか……

ああでも、きょうら<グンタイ竜グンタイ>も、異常な繁殖力と食欲の所為でその場の環境を破壊して、他の生き物もろとも壮絶に破滅するのは確実だったから、元々、生物としては破綻している部分もあるんだろう。

牙斬がざんだって、自分の尺骨を<パイルバンカー>という形で打ち出すなどという、生物としてはあり得ない能力を持ってたからな。だからグンタイ竜グンタイヒト蛇ラミアに比べればマシというだけで生物としてはやっぱり異常なんだと思う。

なんてことがある中でも、斗真とうまとルイーゼは順調に親交を深めていってるようだ。彼女のために斗真とうまは以前よりも張り切って鋼を打ち、ルイーゼも彼の打つ鋼にうっとりと見惚れて斗真とうまのモチベーションを高めるのに一役買ってるらしい。

いやはや、<思わぬ出逢い>というものはあるものだなあ。

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