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第四世代
光編 可能性
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だが、ドーベルマンMPMとホビットMk-Ⅱによって誘導されていたはずのヒト蛇が、突然、追うのをやめた。そして、アリニドラニ村の方に視線を向ける。
「まさか……アリニドラニ村を目指してる……?」
光がそう呟き、俺も、
「まさかとは思うが、でも、嶽の時もなぜか俺達のいる方向へと向かってたからな……」
と口にした時、
「もしかして、同時に現れたルイーゼの存在を感じ取っている……?」
レックスの声。コーネリアス号でやはり状況を見守っていたレックスがそう言ったんだ。
「可能性は、否定できないね……」
光も同意する。それは俺も同じだった。
「ああ、嶽の時には、シモーヌの思考が読み取られているかもしれないと考えて彼女には作戦を伝えなかったことがあった。あの時には結局、それがどうかは確認できなかったものの、正確に俺達の集落を目指して侵攻してたのも事実なんだ。夷嶽や牙斬はそこまでの印象はなかったとはいえ、<顕現した者>同士、何らかの繋がりがある可能性は今も否定できるものじゃないと思う……」
しかしそんな俺に対して光は、
「でも、だからってルイーゼを見捨てたりはできないよね? お父さん」
ニヤリと笑みを浮かべながら言ってくれた。だから俺も、
「もちろんだ。そのためにロボットを揃えたんだからな」
そうだよ。あの不定形生物由来の存在同士で何らかの繋がりがある可能性はずっと前から推測されてた。その上で俺は、ビアンカもルコアも久利生もメイガスもシオもレックスも受け入れた。それをいまさら、『可能性がある』ってだけで掌を返すことはできないね。
そんな俺の想いを、光もしっかりと受け継いでくれてる。
和も含めると三人の子を育てる母親となった彼女は、そういう意味でも逞しい。頼もしい。そして必要とあれば容赦ない苛烈な判断も下せる。
まったく、俺みたいなのからよくこんな優秀な子が生まれたもんだ。もしかしたら密の遺伝子のおかげかもしれないな。あと、エレクシアが母親代わりだったからというのもあるのか。
などと思いつつ、
「とにかく、麻酔薬の用意ができるまで釘付けにするぞ。頼む、光。承認は任せてくれ」
と告げる。
「任せて、お父さん」
凛々しい表情で萌花を抱いたまま、タブレットに示される情報を睨み付ける光が眩しいよ。
「二号機は第三小隊、第五小隊をピックアップ! 三号機は第二小隊と第四小隊と第七小隊をピックアップ! 第六小隊の応援に迎え!」
てきぱきとヘリに指示を出す彼女を、俺はただ見詰めていたのだった。
「まさか……アリニドラニ村を目指してる……?」
光がそう呟き、俺も、
「まさかとは思うが、でも、嶽の時もなぜか俺達のいる方向へと向かってたからな……」
と口にした時、
「もしかして、同時に現れたルイーゼの存在を感じ取っている……?」
レックスの声。コーネリアス号でやはり状況を見守っていたレックスがそう言ったんだ。
「可能性は、否定できないね……」
光も同意する。それは俺も同じだった。
「ああ、嶽の時には、シモーヌの思考が読み取られているかもしれないと考えて彼女には作戦を伝えなかったことがあった。あの時には結局、それがどうかは確認できなかったものの、正確に俺達の集落を目指して侵攻してたのも事実なんだ。夷嶽や牙斬はそこまでの印象はなかったとはいえ、<顕現した者>同士、何らかの繋がりがある可能性は今も否定できるものじゃないと思う……」
しかしそんな俺に対して光は、
「でも、だからってルイーゼを見捨てたりはできないよね? お父さん」
ニヤリと笑みを浮かべながら言ってくれた。だから俺も、
「もちろんだ。そのためにロボットを揃えたんだからな」
そうだよ。あの不定形生物由来の存在同士で何らかの繋がりがある可能性はずっと前から推測されてた。その上で俺は、ビアンカもルコアも久利生もメイガスもシオもレックスも受け入れた。それをいまさら、『可能性がある』ってだけで掌を返すことはできないね。
そんな俺の想いを、光もしっかりと受け継いでくれてる。
和も含めると三人の子を育てる母親となった彼女は、そういう意味でも逞しい。頼もしい。そして必要とあれば容赦ない苛烈な判断も下せる。
まったく、俺みたいなのからよくこんな優秀な子が生まれたもんだ。もしかしたら密の遺伝子のおかげかもしれないな。あと、エレクシアが母親代わりだったからというのもあるのか。
などと思いつつ、
「とにかく、麻酔薬の用意ができるまで釘付けにするぞ。頼む、光。承認は任せてくれ」
と告げる。
「任せて、お父さん」
凛々しい表情で萌花を抱いたまま、タブレットに示される情報を睨み付ける光が眩しいよ。
「二号機は第三小隊、第五小隊をピックアップ! 三号機は第二小隊と第四小隊と第七小隊をピックアップ! 第六小隊の応援に迎え!」
てきぱきとヘリに指示を出す彼女を、俺はただ見詰めていたのだった。
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