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第四世代
光編 人間の価値
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新暦〇〇三七年二月四日
『光や灯が俺のそういう部分を真似ずに済んだ』
いや、もしかしたら必ずしもそうじゃないかもしれない。二人もかなり細かいことに頓着しない部分があるから、もしかしたらそんな形で真似してしまっているのかもな。
ただ、誰かを意図的に傷付けようとするものじゃなければ、まあ、あまり気にしないでもいいかとは思う。
ルイーゼの場合もそういうことだ。彼女の無頓着さは、自分自身に対してはなかなかに厳しいものだとしても、別にそれで誰かを傷付けようとしてるわけじゃない。桜華がサポートすれば済む話だ。そのためのロボットだしな。
加えて彼女の場合は、<鉱物の専門家>という形で俺達に恩恵をもたらしてくれる存在でもある。
だが、ここで注意しなければいけないのは、
『じゃあ、恩恵をもたらしてくれない人間は、存在する価値もないのか?』
という話にはならないということだ。<価値>で人間を語るのは、実は人間の存在そのものを否定する考え方でもある。
なにしろ人間はこれまで、大変な損害を地球や植民惑星の自然に与えてきたからな。それを考えると人間(地球人)の存在はむしろ害悪でさえあると断じる者さえいる。六十世紀になってもなお、
『人間(地球人)こそが害悪だから排除するべき』
と考えてテロ活動を行ってる連中もいたそうだ。<環境テロリスト>と言われる連中だな。
そういう奴らが唱える理屈も、結局は<価値>というものを根拠にしているそうだし。
『自然にこそ価値があり、人間(地球人)には価値がない』
極論すればそういうことらしい。
だが、違う。それは違う。価値のあるなしで語るのは、自らの首を絞める行為なんだ。何しろ<価値>なんてものは、どこに基準を置くかでまったく変わってしまうんだからな。
ましてや<人間の価値>なんて、それこそいい加減で曖昧なものでしかないわけで。
となれば、ここにできる社会においては、<価値>を、命というものの判断基準に置くのは避けるべきだろうな。
地球人社会においても、<一部の人間にとって価値のあるもの>に基準を置いたことで大変な悲劇が繰り返されてきたそうだし。
『どんな宗教を信仰しているか?』
というのもそういうものの一つだろう?
自分達が信仰している宗教にのみ価値があり、それ以外には価値がない。それどころか害悪であると考えたから<邪教>などとして迫害したということもあったはずだ。
ルイーゼは確かに俺達に有益な情報をもたらしてくれたし、これからももたらしてくれるだろう。けれど、彼女がこの世界で生きていられるかどうかは、それとは関係ないんだ。
そして光もそれは承知してくれている。
『光や灯が俺のそういう部分を真似ずに済んだ』
いや、もしかしたら必ずしもそうじゃないかもしれない。二人もかなり細かいことに頓着しない部分があるから、もしかしたらそんな形で真似してしまっているのかもな。
ただ、誰かを意図的に傷付けようとするものじゃなければ、まあ、あまり気にしないでもいいかとは思う。
ルイーゼの場合もそういうことだ。彼女の無頓着さは、自分自身に対してはなかなかに厳しいものだとしても、別にそれで誰かを傷付けようとしてるわけじゃない。桜華がサポートすれば済む話だ。そのためのロボットだしな。
加えて彼女の場合は、<鉱物の専門家>という形で俺達に恩恵をもたらしてくれる存在でもある。
だが、ここで注意しなければいけないのは、
『じゃあ、恩恵をもたらしてくれない人間は、存在する価値もないのか?』
という話にはならないということだ。<価値>で人間を語るのは、実は人間の存在そのものを否定する考え方でもある。
なにしろ人間はこれまで、大変な損害を地球や植民惑星の自然に与えてきたからな。それを考えると人間(地球人)の存在はむしろ害悪でさえあると断じる者さえいる。六十世紀になってもなお、
『人間(地球人)こそが害悪だから排除するべき』
と考えてテロ活動を行ってる連中もいたそうだ。<環境テロリスト>と言われる連中だな。
そういう奴らが唱える理屈も、結局は<価値>というものを根拠にしているそうだし。
『自然にこそ価値があり、人間(地球人)には価値がない』
極論すればそういうことらしい。
だが、違う。それは違う。価値のあるなしで語るのは、自らの首を絞める行為なんだ。何しろ<価値>なんてものは、どこに基準を置くかでまったく変わってしまうんだからな。
ましてや<人間の価値>なんて、それこそいい加減で曖昧なものでしかないわけで。
となれば、ここにできる社会においては、<価値>を、命というものの判断基準に置くのは避けるべきだろうな。
地球人社会においても、<一部の人間にとって価値のあるもの>に基準を置いたことで大変な悲劇が繰り返されてきたそうだし。
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ルイーゼは確かに俺達に有益な情報をもたらしてくれたし、これからももたらしてくれるだろう。けれど、彼女がこの世界で生きていられるかどうかは、それとは関係ないんだ。
そして光もそれは承知してくれている。
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