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第四世代

光編 有機的な対応

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新暦〇〇三七年二月二日



「おはようございます。ルイーゼ」

「……おはよう……」

そんなやり取りが、テーブルの上に置かれたタブレットから届いてくる。桜華おうかとルイーゼだ。シオとレックスのサポートを鈴夏すずかに引き継ぎ、今はルイーゼの監視兼サポート役として、高仁こうじんと共に彼女の鉱物資源調査に同行している。

だが、桜華おうか高仁こうじんを付けたのは大正解だったな。<監視>の方は彼女もまったく不穏な振る舞いをしないから関係ないが、

<日常生活のサポート>

としては必須だった。何しろ、錬慈れんじよりはかなり手が掛からなくなった萌花ほのかの世話をしながらひかりがルイーゼの様子を窺っていても、

「本当に夢中になるとトイレにも行かないんだね。オムツを穿いてそのまま分析器に向かってる。食事も手を付けないし」

などという光景を何度も見ることになって、苦笑いさせるほどだ。ひかりも、地球人女性ほどは身嗜みを気にしないタイプとは言え、ルイーゼは次元が違っていた。

なので、桜華おうかが、分析器に向かったままの彼女の髪を梳き、食事を食べさせ、さすがに大きい方はトイレに行くのでその際に新しいオムツを用意し、ついでにシャワーを浴びさせ、端末でデータの確認をしている彼女の体を拭き、オムツを穿かせた上で服を着せる。

もはや<介護>だよ。

一方、高仁こうじんは、ローバーのメンテナンスや獣の襲撃への備えを一手に引き受けてくれている。

なお、<捜索>や<救助>についてはアンデルセンが担当することになったが、ここまでのところ、アンデルセンが出動するまでのことは生じていない。ドーベルマンMPMとホビットMk-Ⅱのチームだけで対処できているからだ。

実はこれも、情報処理能力と指揮能力を高めたアンデルセンのサポートがあってのことだったりする。

人間の場合、<コーネリアス号のAI>に<アンデルセン>と、複数の指揮があると混乱の原因になったりするものの、ロボットの場合はあくまで、

<全体で一個のロボット>

という形になり、それぞれのAIが情報を並列処理することになるから逆に有機的な対応ができるようになるんだ。多少のラグはあっても、それもやっぱり人間の知覚・思考・判断・行動までのタイムラグと比べてもむしろ早いくらいなので、よほどの場合でない限り問題にはならない。

つまりロボットは、数が増えれば増えるほど高度な思考ができるようになる傾向にあるということだ。

エレクシア達メイトギアレベルになるとそれもあまり影響を感じられなってくるが、ドーベルマンMPMやホビットMk-Ⅱ辺りだと違いが顕著だったりするらしいな。しかも、ホビットMk-Ⅱ各機にスタンドアロンが可能になるほどの性能のAIが搭載されるようになってそれらが連携すれば劇的に変わるのだという。

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