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第四世代

光編 移動拠点仕様

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新暦〇〇三六年十二月二十八日



こうしてルイーゼは、桜華おうか高仁こうじんを伴い、鉱物資源の調査に出ることになった。そのためにまた、ローバーを一台、組み上げる。彼女が好き勝手にうろついて調査できるように、<移動拠点仕様>として。

まあ要するに<キャンパー仕様>ということだな。荷台部分に居住スペースと簡易分析器を備え、物資についてはオートジャイロで順次届ける。

彼女の身の回りの世話と警護については桜華おうか高仁こうじんがいれば問題ない。

そんなこんなで組み上がったローバーに乗り込み、ルイーゼはシオとレックスに見送られてコーネリアス号を出発した。大した行動力だよ。

俺は、錬慈れんじの世話をしながらタブレットでその様子を見ていただけだ。それまでの諸々の指示は、俺の承認が必要なもの以外はひかりがやってくれた。

ちなみに萌花ほのかはもうすでに二歳を過ぎて、見た目には五歳くらいになり、遊ぶ時はまどかひなたうららが一緒に遊んでくれている。やはりすっぽんぽんで集落中を走り回り家の屋根から屋根へと飛び移り、時折、「ガシャン!」「バリバリバリ!」と派手な破壊音をさせながら元気いっぱいだ。

それでいて、遊び疲れるとひかりに抱きついて甘える。ひかりはそれを拒むことなく受け入れ、穏やかに絵本を読み聞かせてやったりもする。決してまどかひなたに任せきりにはしない。二人ももう見た目はすっかり<成人おとな>と言っていいそれになっているものの、実年齢で言えば九歳と八歳だからな。<パパニアン>としてはもう成体であっても<人間>としてはまだまだ子供だ。子供に子供を育てさせるわけにはいかないよ。

なお、じゅんによる<パパニアンとしての学び>については、萌花ほのかはもう少し先になるだろう。まださすがに幼いからな。じゅんもそれを承知しているらしく、萌花ほのかが遊び疲れてひかりに甘えている時に、まどかひなたうららを連れて密林に入っていくようにしてくれている。

単純な<知能>の点では必ずしも高いとは言い難いじゅんだが、地球人の十代前半程度の知能は得ているから、もう十分に<人間としての生き方>についても理解してくれている。その上で彼には<パパニアンとしての生き方>を子供達に伝えてほしいと思ってるんだ。<パパニアンとしての能力>がその体に備わっているうちは、決して無駄にならないと思う。これが、人間として生きることでいずれ失われていくとしても、今はまだ、な。

だから<父親>としては立派にやってくれているよ。彼は。

ああそれから、れいとメイ(九ヶ月)も、しっかりと元気だ。錬慈れんじに意識を向けてる俺にはその気配を感じ取ることはできないけどな。

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