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第四世代

光編 親が見せる悪辣な狡さ

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そもそも、

『生んでやった』

だの、

『育ててやった』

だの、それを、

『恩に感じろ』

だの、およそまともな感覚じゃないだろう? 特に、

『こんな酷い世の中に子供を生み出すなんてできない』

とか思っているならなおさらな。子供に事前に確認して、

『生まれてきたい』

と当人が望んでそれを叶えてやったのなら、まあ、ギリ『恩を売れる』かもしれないが、現にそうじゃないしな。親の勝手でこの世に送り出しておいて『生んでやった』とか、どんな神経してたらそんな考え方ができるんだ?

俺の場合、最初はそれこそ、<ボスの役目>としてひそかじんふくようの求めに応じただけだ。その結果、ひかり達は生まれた。こんな世界に生み出してしまった。本当に俺の都合だけでな。これで恩を売れるとか、どういう解釈をしたらそんなことができる?

百パーセント俺の勝手で来てもらったんだから『育てる』のも当たり前だし、そして俺の子供達は<俺の子供達>だ。ペットでもロボットでも家畜でもない。

『俺の子供なんだから生かすも殺すも俺が勝手にしていい』

なんてのも有り得ない。有り得ないんだよ。

かつての地球じゃ、『生んでやった』『育ててやった』『親が子供をどうしようと親の勝手』なんて理屈がまかり通っていたからこそ、そういう<狡い理屈>の下で子供は育ち、それを学び取って、結果、<狡い人間>に育ったそうじゃないか。

対して、俺が実際にここで子供達を育てその成長を見守ってきたからこそ、『生んでやった』『育ててやった』『親が子供をどうしようと親の勝手』なんていう理屈を俺が振りかざさなかったことで今のひかりあかりがいるのを確認したからこそ、

<親が見せる悪辣な狡さ>

が<狡い人間>を作るんだってのが改めて実感できたよ。

だってそうだろう? 赤ん坊は生まれた瞬間には<狡さ>も何もない。ただの<まっさらな命>だ。なのになんで<狡い人間>になったりする? どこでその<狡さ>を学ぶ? 親や身近な大人から学び取る以外のどこで?

人間(地球人)の親ってのは、

『平気で嘘を吐く』

『約束を反故にする』

『そしてそれを反省もしない』

さらには、

『人に優しくと言いつつ、気に入らない相手のことは平然と傷付ける』

上に、

『実際に自分がやってることを認めようとしない』

みたいなのが多くないか? 俺の両親はなるべくそうならないようにしてくれてたのが今ならよく分かるよ。だから俺もそんな両親に倣って<悪辣な狡さ>を振りかざす人間ではいないように心掛けることもできたんだと思う。

少なくとも、『生んでやった』『育ててやった』『親が子供をどうしようと親の勝手』みたいなことは言ってなかったしそういう振る舞いもしてなかったのは確かだ。

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